新型コロナウイルスによりさまざまな活動が制限される中、オンライン上で交流を図り、同世代から新型コロナ終息後に向けた夢や思いを集め、発信する高校生らがいる。「#君の想いは自粛するな」というスローガンを掲げたプロジェクトの中心メンバーに活動にかける思いを聞いた。(中田宗孝、記事中の数値は5月13日時点)

コロナ終息後にやりたいこと、夢を投稿

インターネット上で繋がった高校生グループによる「#君の想いは自粛するなプロジェクト」は、新型コロナウイルスが終息したらやりたいこと、将来の夢、自分の思いを1枚の紙に言葉や絵で自由に表現し、ツイッターインスタグラムに「#君の想いは自粛するな」「#567を超えろ」「#568」のハッシュタグを付けて投稿してもらう取り組みだ。

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトに寄せられた作品

作品の応募者は高校生に限定せず、小中学生や大学生からも広く募っている。プロジェクトの中心となる高校生たちが作品を集約し、この活動を象徴するモザイクアートの完成を目指している。

目標に掲げる作品数は568点以上。この数字には「コロナ(567)を超える」という意味が込められており、5月13日の時点で210点が集まった。

「思いを文字にすると自分を見直せる」

プロジェクトの代表を務める池田佳隆君(愛媛・松山東高校3年)が、新型コロナによる自粛期間中、久しぶりに書道をして「自分の気持ちと向き合えた」と感じたことが活動のきっかけとなった。

「自分の思いを文字に書いてみると、今の自分自身を見つめ直せる。コロナによって行動が制限される今だからこそ、自分の思いを『外』に発信して成長する機会にしたいと思ったんです」(池田君)

「#君の想いは自粛するな」プロジェクト代表の池田佳隆君(下)、副代表の富田尚幹君(右上)、林明日賀さん(左上)

新型コロナによって学校に通えない、部活ができない、友達と遊べないと途方に暮れる高校生は多い。

「でも自分の思いや夢は自粛しなくていい。コロナをとび箱にして高く飛んで、新しい自分に出会う。そんな人生のターニングポイントとなるような活動ができるはずだと」

オンラインで全国から仲間が集まった

池田君が校外イベントを通じて以前から親交のあった富田尚幹君(愛知・滝高校3年)に相談を持ちかけ、構想がより具体的になり、現在のプロジェクトの方向性に近づいた。

「池田のアイデアはいいなと思いました。コロナによる自粛を自分ごとにきちんと落とし込んで語る池田の熱い思いが伝わってきたんです」(富田君)

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトはテレビ会議システムZoomで会議を重ねる

副代表となった富田君は、高校生の参加するオンラインイベントなどでメンバーを募り、プロジェクトの内容に興味を持った全国各地の高校生たちがインターネット上で繋がった。そして、高校生による「#君の想いは自粛するな」委員会が発足し、5月から活動を本格化させた。

行事が中止になってショック、プロジェクトで救われた

同委員会のメンバーは24人。参加した高校生も、新学期を迎えても臨時休校が続いていたり、留学先からの帰国を余儀なくされたりと、新型コロナの影響で高校生活を大きく変えられてしまった。

メンバーの佐藤裕宜君(宮城・白石高校3年)は、近隣の高校と毎年行う「学校(部活)対抗の定期戦」の中止が決まり気落ちしていたという。3年生の佐藤君にとって最後の定期戦だった。「ショックでしばらく何もしたくない状態になりました。でもこの活動に参加して色々動くことで落ち込む気持ちを忘れられ、僕自身が救われてる」と、心境の変化を明かす。

「かのじょをつくる」「オシャレする!」

全国から寄せられた作品には、新型コロナが終息したら「思いっきり抱きついてやる!!」「かのじょをつくる」「マスク付けずにオシャレする!」といった、生徒たちの率直な思いの丈が書かれていた。

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトに寄せられた作品

メンバーの1人、大野桜子さん(神奈川・公文国際学園高等部3年)は、自分の思いを込めて紙に「Make People Happy」としたためた。

「この機会に(高校生活を過ごす中で)自分の行動の根源になっているのは何かなと見つめ直しました。私は誰かを支えたり、笑顔にしたりするために行動してる。これからも人々を幸せにするような活動を続けていきたいという意思表明として、この言葉を書きました」

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトに米国から寄せられた作品

日本国内のみならず、米国、オーストラリア、インドネシアなど11カ国の若者たちからも思いを書いた作品が届いた。

副代表の林明日賀さん(徳島・徳島文理高校3年)は、「海外の同世代の作品にも『友達に会いたい』『スポーツがしたい』と書かれていました。国が違っても私たちと同じ気持ちを抱いていたんです」と話す。

夏休みに、みんなの思いをモザイクアートに

今後は、夏休み前まで作品の募集を呼び掛け、夏休み中に完成したモザイクアートの公開を予定している。「自分たちの自己満足の活動で終わらせたくない。多くの人に僕らのプロジェクトを認知してもらい、いかにモザイクアートの価値づけできるかが課題になる」(富田君)。

彼らの元に届いた一つ一つの作品は、同委員会のツイッターやインスタグラム、フェイスブックで随時紹介していくという。

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトに寄せられた作品

メンバーは、定期的にオンライン会議を開き、多くの作品を募るためのアイデアや、モザイクアートのデザイン案などの話し合いを重ねる。個々の得意なスキルを活かし「ホームページ作成班」「SNS活用班」「海外広報班」といった班分けをして、目標の実現に向けて着実に進んでいる。

「積極的に動いてくれるメンバーばかり。体育祭などの学校行事をどう成功させようかと練っているような雰囲気なんです」(池田君)

会議の後に雑談タイムを設けて、メンバー同士の仲を深めた。恋愛トークに花を咲かせたり、人狼ゲームに興じて盛りあがったりするうちに距離が縮まったという。富田君は「コロナが終息したら、メンバーたちに直接会おうと決めています」と、小さな願いを膨らませた。

「#君の想いは自粛するな」プロジェクトに寄せられた作品はツイッターインスタグラムから参照できる。