ライトノベルが大好きな高校生記者・鈴木とこー君はこれまでに200冊以上のラノベを読んでいます。そんな彼が「ラノベをあまり知らない人にも読んでほしい」とおすすめする「千歳くんはラムネ瓶のなか」(ガガガ文庫)を紹介してもらいました。

主人公はイケメンでリア充

今回ご紹介するライトノベルは、ガガガ文庫の「千歳くんはラムネ瓶のなか」です。ファンの間では「チラムネ」という略称と共に、2019年6月に第1巻が発売してから愛されている作品です。

裕夢著・小学館・630円

タイトルにも登場している主人公、千歳朔はいわゆるリア充で、福井県の進学校で、「スクールカースト最上位の筆頭」のように扱われています。イケメンだし、勉強も運動もできる「持つ者」が泥臭くも真っ直ぐに青春を謳歌する青春ラブコメです。

「自分がなりたい自分」になりたい

ライトノベルというジャンルでは、近年、ぼっちだったり陰キャと呼ばれるような根暗だったり…という人が主人公になっている風潮がありました。ライトノベルを読む層でも、読まない層でも、「リア充爆発しろ」というような言葉は、一度は聞いたことがあるのではないかと思います。

この作品を読んで僕は、ぼっちやらリア充やらと定義して考えているのは、つまらないことなんだと思いました。

主人公は確かにリア充です。でも、本人はリア充だとかスクールカーストだとか、そんなのはどうでもいいと言ってしまいそうなくらいに「自分がなりたい自分」であろうとします。

恐れるべきは自分を嫌いになること

美しく生きる。そのためならあざ笑われても、うとまれても、たたかれても構わない。自分を嫌いになってしまうことこそ恐れるべきこと。そんな考えを抱く彼は、作中で迷い、歯がゆさを覚え、それでも仲間のピンチにかっこよく現れる。古臭さすら感じる「ヒーロー」という言葉は、しかし彼にはふさわしい言葉だとも思います。

でもそれと同時に、彼はただヒーローなだけじゃありません。無邪気で、遊び心に満ちている。ヒーローである以上に彼は、ただただ真っ直ぐな「少年」でもあるんだと思います。

そんな「ヒーロー」であり「少年」でもある彼の生き様に触れて、自分も「美しく在りたい」と思うようになりました。

誰もが「どういう存在か」を定義され、レッテルを貼られかねない世の中です。そんな中でレッテルを吹き飛ばして、自分のなりたい自分になろうと思える作品です。何かを頑張っている人も、何かを頑張るパワーが出ない人も、ぜひ読んでみてください。(高校生記者・鈴木とこー=2年)