ライトノベルが大好きな高校生記者・鈴木とこー君はこれまでに200冊以上のラノベを読んでいます。そんな彼がおすすめするラノベ「夢見る男子は現実主義者」を紹介してもらいました。

高嶺の花に熱烈アプローチ、でも…

『夢見る男子は現実主義者』おけまる著 さばみぞれイラスト(HJ文庫、619円=価格は1巻、税抜)

『夢見る男子は現実主義者』おけまる著 さばみぞれイラスト(HJ文庫、619円=価格は1巻、税抜)

高校生になった今、世の中に「夢」を見ることがありますか? 

この「夢」というのは、目標という意味の夢ではありません。もっと広義的な、「現実を忘れて盲目的な状態になっている」ことを言っています。

今回紹介するライトノベル『夢見る男子は現実主義者』は、そんな「夢」を見ていた男子高校生が、ふとした瞬間に「現実」に気付いてしまうところから始まる青春ラブコメです。

自分は普通だったと気づいて

作品の主人公・佐城渉は高校1年生です。彼は中学時代から、同じクラスの美少女・夏川愛華に恋をし、熱烈なアプローチをしていました。

それは、猛勉強の末に彼女と同じ高校に進学し、入学後も周囲から認められるほどの熱烈さです。しかし、夏川愛華はそのアプローチを中学時代からずっとすげなく断り続けていました。

そんなある日、佐城渉は突然現実に気付きます。学力も、運動神経も、容姿だって「普通」な自分が、夏川愛華という「高嶺の花」にアプローチするなんてとんでもないことだったのだ、と。そう気づいてからの佐城渉は、夏川愛華へのアプローチをやめていき……というところから、この作品は進んでいくのです。

「現実」を見てもなくしたくないもの

高校生くらいになると、自分が特別なのか、普通なのかが分かるようになってくるでしょう。その自己分析に対し、私たちが思うことはそれぞれです。「特別でいたい」と願う人もいれば「普通でありたい」と思う人もいるでしょう。

そして同時に、「普通」と「特別」に一線を引いてしまうのかもしれません。あの人は特別、自分は普通……きっとそうやってわきまえることこそが大人になることなのでしょう。だからこそ、今まで現実を見ていなかったこと、つまり普通だと気付かずに自分が特別だと感じていたころの自分を私たちは――あるいは大人たちも――「若気の至り」「子供だったなぁ」と恥ずかしそうに語るのではないでしょうか。

ですが同時に、私たちは大人になろうと子供のままだろうと、決してなくしたくないし否定したくないものを持っているはずです。佐城渉ももちろん同じです。

すらすら読めて面白い

現実主義者としての新しい彼。現実主義者になろうとも変わらず抱いている心。そしてこれらが混ざり合うように進んでいくストーリーの中で、「私にとって大人になってもなくしたくないものはなんだろうか」と考えるようになりました。

純粋に「読んで楽しい」という意味でも、最高に面白い作品です。同時に、同じ高校生だからこその気付きもある作品でしょう。

この作品という「夢」が、この記事を読んだ方の「現実」の一助となれば幸いです。元々がWEBに投稿されていた作品ということもあり、比較的すらすらと読めます。普段読書をしない方も、ぜひ読んでみてください。(高校生記者・鈴木とこー=2年)