ライトノベルが大好きな高校生記者・鈴木とこー君はこれまでに200冊以上のラノベを読んでいます。そんな彼がおすすめするラノベ「現実でラブコメできないとだれが決めた?」を紹介してもらいました。

ラブコメを学校生活で実現したい! 男子高校生が奮闘

『現実でラブコメできないとだれが決めた?』初鹿野創著 椎名くろイラスト(ガガガ文庫、660円=価格は税抜)

理想と現実が違う。それは、高校生にもなれば、否が応でも「察してしまう」事実でしょう。今回ご紹介するのは、そんな現実と理想との壁を打ち砕かんとする高校生の物語『現実でラブコメできないとだれが決めた?』です。

『現実でラブコメできないとだれが決めた?』初鹿野創著 椎名くろイラスト(ガガガ文庫、660円=価格は税抜)

ラブコメしたい男子高校生の日々

タイトルからも分かる通り、この作品はとにかく「ラブコメ」というものを実現しようとします。アニメやドラマ、マンガなどさまざまなコンテンツでフィクションとして娯楽として楽しまれている「ラブコメ」を、リアルな日常生活で行おうとする物語、というわけです。

主人公の名は長坂耕作。彼は、とにかく「ラブコメ」を愛してやまない、普通の高校生です。「ラブコメ」で描かれる主人公のように、特別な才能や魅力があるわけでもなければ、幼馴染も妹もいない。「ラブコメ」とは全く縁のない、むしろ人よりも不器用な彼が、現実とは程遠い「ラブコメ」の世界を現実にしていくのです。

すらすら読める面白い会話

特筆すべき点は2点。笑いと、熱さにあります。

とにかく読んでいて笑えます。スラスラと読めるテンポのいい文章、主人公の斜め上の行動、そしてそんな主人公のツッコミ役となる上野原彩乃との会話は、面白いことこの上ないんです。

また、パロディーも多々含まれていて、これが面白さを加速させていきます。パロディーされている作品を読んだことのある人ならクスっと笑えて、読んだことのない人ならすぐに読みたくなるようなワクワクに満ちたパロディーは必見です。

憂うつな日の心の栄養剤になる

そして熱さ。前述したように、この作品は「ラブコメ」を現実のものとする物語なのですが、当然、現実は「ラブコメ」にはなりません。何か面白いイベントも起きないですし、運命が変わるような出会いもありません。

幼馴染やミステリアスな先輩、病弱なクラスメイトなど、「ラブコメ」っぽいキャラも、どこにもいないのです。そんな、退屈な現実の中で「ラブコメ」という理想は、単なる主人公の妄想へと成り下がってしまうかもしれません。が、彼はそんなことを認めないのです。

主人公となるための条件を満たせば、誰だって、どんなに普通で取り柄のない人だって「ラブコメ」を送れる。そんな彼の熱い思いには、きっとあなたも惹きつけられます。

読んでいて物凄く元気の出る作品です。ふと見上げた空が曇っていて憂鬱になる日や、壁にぶち当たってもう諦めてしまおうかと思う日に、きっと心の栄養剤になってくれる1作です。(高校生記者・鈴木とこー=2年)