片倉高校(東京)吹奏楽部は、多くの大会で好成績を収める強豪だ。今年度は、全国の予選を突破した30校が出場した「第67回全日本吹奏楽コンクール 高校の部」(全日本吹奏楽連盟など主催)で金賞を受賞。部員がアイデアを出して考案する練習を積み重ね、音色に磨きをかけている。(文・中田宗孝、写真・野村麻里子)
意見を集約しない
部長や各楽器のパートリーダーといった中心となる部員たちを、部全体をまとめる「運営系」、日々の練習内容を考える「演奏系」の2つのグループに分けているのが特色だ。
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もしも部長を軸に1本化した体制にすると、部員たちの声は1つに集約されてしまう。運営系と演奏系で分けることで、さまざまな意見が出て、音楽的な広がりを生む効果があるという。「運営系と演奏系で意見が食い違った時、話し合いで円満に解決しているようです」(顧問の馬場正英先生)
2時間集中で効率良く
平日の練習は、放課後2時間。朝練はない。短時間で効率的かつ濃密さが求められる練習メニューは、3年生部員5人による「セクションリーダー」が決める。その1人、天野寛大君(3年)は、「僕らは帰宅後も密に連絡を取り合い、練習内容を考えます。すべては演奏をより良くするため」と話す。
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部員たちが提案した「1対1練習」は、トランペット奏者とクラリネット奏者のように、複数の楽器で音を合わせる際も、組む機会の少ない楽器同士で練習を行う。先輩と後輩、違う学年でペアとなるのがポイントだ。「(パート練習では)交流のない上級生の奏者と向き合って音を出すと、学年を超えて仲良くなります」(部長の永山あかりさん・3年)。他楽器の音色を個人単位でしっかり確認できるため、全体合奏での一体感のあるサウンドにもつながる。
取材日は、楽器別でなく、中音や高音といった同じ音域ごとに分かれて練習に励んでいた。他にも、楽曲中の難解なリズムを歌ってから楽器演奏したり、楽曲を踊りで表現したりと、工夫を凝らした練習でレベルアップを図っている。
心の変化を感じ取る
部長の永山さんは、部全体の雰囲気づくりを意識。部員一人一人に目を配らせ、部員の心の変化を感じ取れば良い方向に導く。「彼女は部員をよく見てる。『あの子、どう?』と聞けば細かく教えてくれます」(馬場先生)
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部長は部員全員に向けて話す機会も多いため、「言葉」に気を払う。「本番の演奏で大きな失敗したとします。私が厳しい言葉で失敗を指摘しても、部員たちのモチベーションを下げるだけ。なので、失敗から学べること、次の演奏に生かせることを言葉にして伝えます」
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失敗で終わらせない、部長の前向きな言葉は、その後の演奏に好影響をもたらす。「気持ちは演奏に表れます。部全体が明るい雰囲気だと、暗い時と比べて音の響きがまるで違うんです」(天野君)
豊富な練習メニューを紹介
少人数編成での基礎練習
低音、中音、中高音、高音域の楽器が集まり音を出す。「小さい合奏グループ」でのまとまり感を全体合奏に生かす
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歌も活用
歌声が合うと合奏がそろうようになる
楽曲を踊りで表現
楽曲内の印象的なフレーズを踊りで表現。奏者同士のイメージ共有に効果てきめん
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1対1練習
異なる楽器でペアになる。他楽器の音色を知る絶好の機会だ。パートリーダー同士で練習してみてもらった
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部活データ
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部員73人(3年生25人、2年生22人、1年生26人)。2019年「日本管楽合奏コンテスト 高校B部門」最優秀賞を受賞。指揮台の上で激しく躍動する顧問の馬場正英先生の指揮は「馬場ダンス」として広く知られる。「先生の指揮で奏者の気持ちは盛り上がります。いつもパワーをもらっています」(永山さん)