千葉女子高校オーケストラ部は、高いアンサンブル力に定評があり、全国レベルのコンクールでも数々の受賞歴がある。しかし、部が求めているのは賞ではないという。顧問の山岡健先生は「音楽は競い合うものではありません」と言い切る。「聴く人の気持ちを癒やし、演奏する側が音楽を愛好する。音楽を通じて自分を高めていくことが第一です」

部長の伊地知美奈さん(3年)が「中学1年の時には千葉女子でオケをやると決めていた」と話すように、オーケストラ部に憧れて同校に入学する部員は少なくない。秋元萌さん(3年)は生演奏を聴き、「技術だけでなく、山岡先生や当時の先輩の温かさに触れて、ここに入るしかない」と入学を決断したという。

入部当初は半数以上が楽器初心者。先輩が1対1で新入部員を教える。各パートについているプロ講師の指導もあって、「経験の有無を問わず上達できる環境が整っている」(秋元さん)。峯村紗和子さん(3年)は「人数が多くて目的意識もそれぞれだけど、音楽を作ってみると一つになれる」のが部の持ち味と語る。

年間に約30回の演奏会をこなしているが、中でも2、3年に1回のペースで行っているヨーロッパ演奏旅行が一大イベントだ。今年3月にも8日間、ドイツのデュッセルドルフやニュルンベルクを訪問。本場の聴衆からスタンディングオベーションでたたえられ、地元紙にもそのパフォーマンスを高く評価された。「設備の不具合で演奏が中断してしまったのですが、お客さまが大きな拍手をくださって、最後まで演奏できたのがうれしかった」と峯村さん。演奏後、ほとんどの部員が感動で涙を流した。

3年生にとっては、5月のスペシャルコンサートが高校生活最後の大舞台。「自分たちが納得できるような演奏で締めくくりたい」と話していた伊地知さん。「私たちが引退した後もオーケストラ部が世界の人たちから愛され、発展できるように応援したい」と目を輝かせた。 (文・写真 小野哲史)

学校紹介
1900年設立。萩原出校長。生徒数961人。国際交流や英語教育にも力を入れる。