「建国の父」の娘
長く軍人による支配が続いたミャンマーで、約半世紀ぶりに文民政権が誕生した。圧政に苦しんだ国民の大きな期待を集める新政権を率いるのは、新政権の事実上の最高実力者「国家顧問」に就任したアウン・サン・スー・チーさんだ。
スー・チーさんはビルマ(現在のミャンマー)を独立に導いた「建国の父」アウン・サン将軍の長女として生まれた。2歳の時に父が暗殺され、長く外国で暮らした。英オックスフォード大を卒業し英国人と結婚、京都大で客員研究員だった時期もある。
14年以上拘束・軟禁
1980年代末から民主化運動にかかわり、民主化の旗手として軍事政権に抵抗し続けた。この間、計14年以上も拘束・自宅軟禁下に置かれたが、それにも屈せず、信念を貫く姿勢は「闘う孔雀(くじゃく)」などと称され、91年にノーベル平和賞を受賞した。
民主化政党党首として政権へ
2012年、民主化政党「国民民主連盟(NLD)」党首として連邦議会補選に臨み、当選。15年の総選挙で再選された。
今年3月に発足した新政権では、新設の「国家顧問」に就任、外相と大統領府相も兼任する。現行のミャンマー憲法では、外国人の家族がいる国民は国家元首である大統領に就任できないと規定されている。このため、スー・チーさんは総選挙直後から、「大統領を上回る存在になる」と公言していた。
軍人議員団は「多数派の暴挙」「憲法違反」と猛反発、今後の混乱要因にもなりかねない。スー・チーさんの政治運営を「独裁的」と懸念する声も出始めた。
memo ミャンマー
タイとインド、中国に接しベンガル湾に面する。面積は約68万平方キロ(日本の約1.8倍)、ビルマ族など約50の民族から成る人口は約5400万人で、仏教徒が約9割を占める。19世紀に英植民地となり、1948年に独立。62年の軍事クーデターで社会主義による一党独裁体制に。88年に民主化運動が起きたが再び軍事クーデターで軍事政権が発足、軍政は2011年に民政移管し15年総選挙でスー・チーさん率いる野党のNLDが圧勝した。