いとう・けんたろう 1997年6月30日生まれ。東京都出身。モデルを経て2014年に俳優デビュー。主な出演作は、ドラマ「アシガール」、「今日から俺は!! 」、映画「コーヒーが冷めないうちに」など。19年秋公開予定の映画「惡の華」では、主演を務める。

伊藤健太郎さんは、注目の若手俳優として映画やドラマで活躍を続けている。高校時代を振り返った時に真っ先に思い浮かべるのは、芸能活動と両立しながら体育祭で応援団長を務めた経験だという。大役を果たせたのは「親友の支えがあったからだ」と、当時を懐かしむ。 (文・中田宗孝、撮影・幡原裕治)

親友にピンチを救われた

高校2年生の時、体育祭の応援団長を務めた。応援団には長年の伝統がある。練習にはOBが駆けつけ、声の出し方はもちろん、普段の生活態度から厳しく指導を受けたと振り返る。

当時から、学業と芸能活動を両立していた伊藤さんは、仕事の都合で応援団の練習を休むこともあったという。団長不在の練習が続くと団員たちの士気が下がりかねない。そんなピンチを、副団長の親友が救った。「僕のいないところで他の団員に向けて『アイツは別の場所で頑張ってる。だから俺たちも頑張ろうぜ!』と、まとめてくれていたんです」

迎えた体育祭当日。伊藤さんは長ランを着て、競技の応援に声をからし、演舞を披露した。「歴代の応援団を超えたなってくらいの達成感がありました。熱量は過去最高!」と誇る。陰で支えた親友とは今でも交流が続いている。「アイツは一生の友達。大事にしたい」

楽しそうならやってみる

高校生には「自らの『興味』と『好奇心』に従うべき」とエールを送る。自身も興味本位で始めた芸能活動が俳優としての今を創ったそうだ。

「将来の夢を描くと、それが重たいと感じる人もいるんじゃないかなと。『何か楽しそうだな』と感じたら気軽にやってみる。それが未来の自分の第一歩になるし、全力で取り組めば絶対にマイナスにはなりません」

「消防士の声」を追求

アニメ映画「きみと、波にのれたら」では、新人消防士の声を担当した。俳優業では撮影前に役作りを入念にするタイプではないそうだが、声優の現場では役を作り込んだ。「天真らんまんで元気な若者をイメージして声の収録に臨みました。僕の素の声が低めなので、普通に話すと元気さが失われてしまう。だから声のトーンは常に高めにしようと心掛けました」

また、実際の消防士が訓練する映像を監督に見せてもらい、リアルな消防士の声に近づけた。「ハードな訓練中の酸欠になるほどの息づかい、ふと漏らすため息などに気を払ったんです。言葉以外の細かな声の演技にリアリティーがあるとキャラクターがより活(い)きてくるんです」

「きみと、波にのれたら」

 小さな港町に暮らすひな子(声:川栄李奈)は、火事騒動をきっかけに親しくなった若き消防士の港(声:片寄涼太)と恋に落ちるが、港が海の事故で命を落としてしまう。
 焦燥するひな子だが、2人の思い出の歌を口 ずさむと水の中に港が現れ…。
 配給:東宝。6月21日より全国公開。
©2019「きみと、波にのれたら」製作委員会