早稲田大学の入試改革の方針を発表する鎌田薫総長(右から2人目)ら大学幹部(12月2日、同大早稲田キャンパス)

早稲田大学は12月2日、今後の入試改革の方向性を明らかにした。学生の多様化をめざし、教科学力試験の方法や比率を見直すことや、関東以外からの入学者を増やすことが柱。その一環として、今の高校1年生が受験する2018年度入試から地域貢献への高い意識を持つ人を対象にした新しいAO入試を始める。同大初の「学部横断型入試」になるという。
(西健太郎)

入試改革が最重点課題

早大は2012年に決めた中長期戦略の冒頭に「入試の抜本的な改革」を盛り込み、14年には新しい入試を実施するための入学者選抜オフィスを新設するなどして、検討を続けている。

当面、「教科型試験のみの入試の方法や比率を見直し、入学者層の多様化を推進」「この30年で10%減った関東以外の学生を取り戻す」といった改革テーマをかかげる。鎌田薫総長は、改革の背景にある同大が求める学生像を「グローバルな価値観をもって多様な人とコミュニケーションをとり、時代を拓ける人」と語る。

18年度から新AO

こうした考えから18年度入試から始めるのが「地域貢献型人材発掘入試」(仮称)。地元の地域への貢献に高い意識を持つ受験者に志願してもらうことが狙いだ。

早大はこれまで学部ごとに入試を実施してきたが、新入試は、総長ら大学本部が主導し、複数学部で実施する「学部横断入試」なのが特徴。対象学部は調整中で、今春発表する。全ての都道府県からの入学者受け入れを目指すという。

選考は、「学力型AO」方式。具体的には、書類選考、「論理的な文章」を書く課題など。センター試験で一定の点数を取ることも求める。

新入試での入学者は、所属学部のカリキュラムで学ぶのに加え、日本の各地域のリーダーや企業経営者と学ぶ同大全体の社会連携プログラムや、出身地域でのインターンシップ(就業体験)に参加。卒業後は地域に戻って活躍してもらう考えだ。

各学部でも改革

鎌田総長は「大学入試が変わらなければ日本の教育は良くならない。唯一の正解を追い求めるマークシート方式の入試を変えなければいけない」と改革への意欲を語る。

とはいえ早大の学部入試でもマークシート方式の問題が大半を占める。17年度入試から人間科学部が対話力、表現力、分析力などを重視する新たな公募制学校推薦入試を始め、文学部・文化構想学部が一般入試の定員の一部で英検、TOEFL(iBT)など英語4技能テストを取り入れる。

こうした学部ごとの改革と、大学全体での改革を並行して進めることになりそうだ。

一般入試の定員減へ

早大では、全ての入試方式の中でAO入試の入学者が最も学業成績が良いという。現在56%を占める一般入試の入学者を2030年頃までに4割まで減らし、AO入試や推薦入試を4割、今回発表されたような新しい入試を2割という比率に変える考えだ。

早稲田大学の学部ごとの入試方式(2015年度)

 

※早大の資料による。附属・系属校推薦、帰国生、外国学生の各入試などは除いた