文部科学省が2021年度入試(20年度に実施)から導入する予定だった英語民間試験の利用システムをとりやめたことに伴い、国立大学は11月29日までに相次いで、一般入試(一般選抜)での民間試験利用の撤回などの方針変更を公表した。
文科省が導入する予定だったのは、国側が認めた英語の民間資格・検定試験を高校3年生に受けてもらい、結果を大学入試センターがとりまとめて大学に提供するしくみ。国立大は4校を除く78校が英語民間試験を出願資格や合否判定などに使う方針を決めていた。
だが、萩生田(はぎうだ)光一文部科学大臣は11月1日、経済事情や地域にかかわらず民間試験を安心して受けられる状態になっていないことなどを利用に民間試験利用のシステム導入を「延期」することを発表したのを受け、国立大学協会は各国立大学の入試で英語民間試験の利用を求める方針を止めるとともに、11月29日までに受験生に向けた対応を明らかにすることを申し合わせていた。
主な国立大規模大学の方針は次の通り。
東京大学
東京大学は、一般入試の出願資格として民間試験結果や高校教員による書類で英語力の証明を求める方針を取りやめた。
名古屋大学
名古屋大学も東京大と同様の方針を示していたが、「英語の試験に関する国の新しい方針が決まるまでは見送る」と発表し、英語力を出願資格とすることを取りやめた。
京都大学
京都大学も、一般入試の出願資格として民間試験結果や高校教員による書類での英語力の確認を求めていたが、とりやめた。文学部の特色入試で指定する英語民間試験の成績を利用する方針も取りやめた。
大阪大学
大阪大学も、一般入試の出願資格として原則、英語民間試験結果を利用する方針を取りやめた。一方で、AO入試(総合型選抜)・推薦入試(学校推薦型選抜)では、外国語学部、法学部国際公共政策学科、経済学部、歯学部、工学部(一部)では、英語民間試験を課すという。
九州大学
九州大学も、一般入試で英語民間試験か高校などによる英語力の証明を出願資格とする方針をとりやめた。AO入試や推薦入試では、20年度入試でも独自に英語民間試験を利用している学部などは利用を続ける。
一橋大学
一橋大学も、一般入試で英語力を出願資格として民間試験の成績や高校教員による書類で確かめる方針だったが、これを取りやめた。
東京工業大学
東京工業大学は、英語民間試験の成績を出願資格とし、また民間試験の成績を点数化して筆記試験の成績とあわせて合否判定に用いる方針だったが、いずれも取りやめた。
筑波大学
筑波大学は、英語民間試験で高い成績をとった場合は、大学入学共通テストの英語の点数に加点する方針だったが、これを取りやめる。また、共通テストの英語は、センター試験の筆記と聞き取りの配点から変更して、リーディングとリスニングが100点ずつになるが、筑波大は独自に配点し、これまでと同様リーディング160点、リスニング40点を維持する。
東北大学
東北大学は、もともと英語民間試験を利用しない方針を決めていた。
北海道大学
北海道大学は、もともと2021年度入試で英語民間試験を利用しない方針を決めていた。22年度入試以降は民間試験で高い成績をとった場合は大学入学共通テストの英語に加点する方針を決めていたが、これをとりやめる。今後、文科省が英語試験の新たな方針を決めるまでは、大学独自に英語民間試験の利用はしないという。
広島大学
広島大学は、一般入試で国が認める英語民間試験の受検を出願要件としていたのを取りやめる。一方で、8種類の英語民間試験のいずれからで大学側が示した成績(英検なら準1級合格)を上回れば、共通テストの英語を満点とする方針は維持するという。推薦入試やAO入試の一部で英語民間試験の成績を出願要件としたり成績によって加点したりするという。