「寝ても寝ても眠い」「すっきりと目覚められない」といった睡眠に関する悩みの原因と対策について、睡眠科学を専門とする医師の大川匡子先生(睡眠総合ケアクリニック代々木理事)に聞いた。

朝の光で体内時計を調整

最近のある企業の調査によると、日本人の平均睡眠時間は男性6時間30分、女性6時間40分で、主要28カ国中最短だ。日本の高校生の平均就床時間は夜12時近く。「必要な睡眠時間は、個人差もありますが8~10時間。多くの高校生が睡眠不足です」。実際に寝不足を感じる高校生は全体の60~70パーセントにも上るという調査もある。

適切な睡眠時間を確保すると、学業成績、運動能力ともに上がるという日本やアメリカの学校のデータもある。「勉強などのために無理に睡眠時間を削ると能率が悪くなるだけでなく、将来認知症になる可能性があるようです」

とはいえ夜更かしの習慣を急に変えるのは難しい。「体内時計は明るくなると動き出します。まずは早起きして朝の光を浴びることから始めましょう。その日はきっと早めに眠れるはずです」

スマホは通知オフに

「寝ても寝ても眠い」なら、睡眠の質が良くない可能性がある。寝る直前までスマートフォンの光を浴びることで、体内時計が乱れる。さらに眠りに落ちた後も、SNSなどの着信を知らせるちょっとした振動が、深い睡眠を妨げる。画面も夜は暗めの設定に。アクションゲームなどで脳を興奮させることも禁物だ。理想は、スマホは寝室に持ち込まないこと。それが無理でも眠る時は通知を切ろう。

体内時計の調整には、照明の工夫も効果的だ。寝室には間接照明や光の強さを調整できる照明を取り入れること、寝る前にLEDなどの強い光は浴びないことなどを心掛けたい。

寝る前にストレッチ

不安やストレスも睡眠の質を低下させ、悪夢を見る原因になることもある。就寝前にぬるめのお湯で入浴したり、ホットミルクやハーブティーなどを飲んだり、ストレッチをして体の緊張をほぐしリラックスするだけでも効果がある。

「質、量とともに十分な睡眠を取っているのに眠い」場合には、病気を疑おう。「ナルコレプシーや過眠症、睡眠リズム障害など睡眠の病気は70種類以上。生活に支障が出るほど困っていたら、睡眠外来を受診しましょう」
(野口涼)

 
 

大川匡子先生

おおかわ・まさこ  医学博士。睡眠総合ケアクリニック代々木理事。携わった書籍に『睡眠障害の子どもたち』(編著)、『睡眠のなぜ? に答える本』(監修)など。