お茶の水女子大学は、2017年度入試から新しいタイプのAO入試「新フンボルト入試」を始める。入試当日に文系は図書館での資料調査、理系はグループ実験をしたうえで、レポート作成や討論をする。大学での学問を先取りするような入試によって、大学入学後の「のびしろのある学生に来てほしい」と同大は期待する。(西健太郎)

今年8月に開かれた、「プレゼミナール」の予行版には高校生約250人が参加した。写真は図書館での情報検索演習(写真提供・お茶の水女子大学)

プレゼミナールを実施 高校2年生も参加可能

 新しい入試の定員は20人。近代大学の原型であるベルリン大学の創設者の名前をとり、「新フンボルト入試」と名付けた。

 新入試では、9月に「プレゼミナール」を2日間実施する。同大教員による模擬講義や演習(ゼミ)、実験などが複数開かれる中から選んで受講し、情報検索方法やレポートの書き方も学ぶ。受験生以外の高校2年生や高校の先生も参加できる。「大学で学ぶ意味を高校生に感じてほしい」(髙﨑みどり副学長)という考えからだ。

レポート作成やグループ討論も


 プレゼミナールの受講内容、志望理由書などの提出書類、外国語検定試験の級・スコアなどにより1次選考が行われ、通過者への2次選考は10月に2日間かけて実施する予定。

 内容は、文系、理系で異なる。文系は出題された大きな課題(例えば「貧富の差をなくすことは可能か」)について、受験生が同大の図書館を自由に使って文献を調べ、レポートを作成する「図書館入試」。発表やグループ討論を課すことが検討されている。大学のゼミのような内容だ。

 理系は「実験室入試」と題し、講義を受けたうえで、テーマ(例えば「色素の色が触媒でどう変化するか」)の実験にグループで取り組み、結果を基に討論し、レポートをまとめる形式が検討されている。

暗記の量ではなく「のびしろ」を評価

 同大が2008年度から実施する現行のAO入試(定員10人)でも模擬講義を受けたうえでのレポート作成や討論を課してきた。合格者の入学後の成績が一般入試より良いなど成果があったが、「課題発見・設定力」「情報検索力」「理系の基礎学力」を評価が不十分だったという。新入試は、こうした力の評価を意識したものだ。

 入試推進室長の安成英樹教授は「のびしろのある学生」に入学してほしいと新入試の狙いを語る。「暗記の量ではなく、情報を集める力や、自分で論理を組み立てる力を評価したい。受験生は、この入試のための特別な対策は不要です。高校で育んできた力をぶつけてほしい」と話している。

 

国立大入試、多様化の傾向

 
 文部科学省によると、2016年度に学部学生を受け入れる国立大学82校(定員9万5760人)のうち、AO入試を課すのは50校(定員2952人)、推薦入試を課すのは77大学(同1万1951人)。16年度から東京大が新たに推薦入試を導入。京都大も学部ごとに推薦入試やAO入試を始める。
 文科省は、各大学の入試に、暗記量などに偏らない「多面的な評価」を求めており、方法の例として面接や討論、発表などを挙げている。お茶の水女子大学の新入試は、こうした流れに沿ったものといえるが、選考には手間がかかり、実施大学や対象人数を増やすには、課題がありそうだ。



(高校生新聞 2015年10月号から)