多くの人に伝えたいという2人

順天高校(東京)では、SGHの活動の一環として、毎年希望者のうち選抜された生徒が1週間のフィリピンフィールドワークに参加している。丸山ちひろさん、新島実梨さん(共に2年)の2人は、フィールドワークに参加するにあたって「フィリピンの薬物問題の現状」について調査・研究を行うことにした。(文・写真 野口涼)

スラム街やリハビリセンターを訪問

1年次から始めた事前研究で2人は、フィリピンではドゥテルテ大統領による過激な麻薬取り締まりで多数の死者が出ていること、それに伴い薬物中毒者が劇的に減少していることなどを知り、複雑な思いを抱いたという。

昨年9月に実施されたフィールドワークでは、フィリピンの薬物事情を知るためスラム街や学校、薬物リハビリセンターなどを訪ねた。

スラム風景(学校提供)
協力してくれた小学生(学校提供)

特にスラム街の住民へのインタビューでは、スラム街では貧困から薬物の売買に関わる子どもたちが珍しくないこと、そういった子どもたちの親もまた薬物中毒である場合が多いことなどが分かった。

村の子どもにインタビュー(学校提供)

「学校に行く子には薬物の知識を学ぶ機会がありますが、スラム街の子どもたちのほとんどが学校に行っていません。事前研究の段階では、子どもたちに薬物の危険性を伝える絵本などを配ることが対策になるのではと考えていましたが、ほとんどの子どもが字を読むこともできないと知り、薬物問題の背後にある貧困・教育の問題の大きさを痛感しました」(新島さん)

薬物中毒者の犯罪に恐怖する人々

インタビューに応じてくれた人たち30人のほぼ全員がドゥテルテ大統領の政策に賛成だったことにも驚かされた。「私たち日本人には信じられないことですが、薬物中毒者による犯罪が、これまでフィリピンの人々の生活にどれだけ暗い影を落としていたかが少し理解できたように思いました」(丸山さん)

貧困・教育という大きな問題に対して高校生ができることは少ないが、「実際に現地を訪れ、感じたことを一人でも多くの人に伝えることができれば」と丸山さん。12 月に立教大学で行われる課題研究発表会にも参加した。新島さんは「薬物から子どもたちの気をそらすためのスポーツ振興策なども考えていきたい」と述べた。

リハビリセンターでインタビュー(学校提供)