すべてがFになる
森博嗣著(講談社文庫、853円)
◆キーワードをもとに事件解決
天才的な計算能力を持つ女子大学生と、彼女が幼いころに「自分より賢い人間だ」と初めて認めたある大学の助教授が研究室を訪れた。2人は、ウエディングドレスを着たままの死体を発見。誰も侵入することができず、外にも出ることができないはずなのに……。「すべてがFになる」というキーワードをもとに事件を解決していくところが、おもしろく読みやすい。 (平野成美さん・2年)
さよならドビュッシー
中山七里著(宝島社文庫、607円)
◆あなたは必ずだまされる
ピアニストを目指す16歳の遥が、祖父・いとこと火事に遭ってしまう。1人だけ生き残ったものの全身に大やけどを負う。それでも、ピアニストの岬洋介と共にコンクール優勝を目指し、レッスンに励むが、不幸な出来事や殺人事件までもが起こってしまう。音楽に詳しくない人でもスラスラ読めるので、気軽に読んでもらいたい。再度読みたくなるラストだ。 (齋藤真生さん・2年)
アクロイド殺し
アガサ・クリスティー著、羽田詩津子訳(ハヤカワ文庫 クリスティー文庫、886円)
◆ポアロシリーズの異色作
灰色の脳細胞で有名な探偵ポアロのシリーズ。いつもの第三者視点ではなく、ポアロの隣人である医師の「私」の手記という珍しい形を取っていて、ポアロによる、村の裕福な未亡人の殺害事件の捜査のいきさつを「私」の視点で語る。読みながら自分で考察するのが楽しい作品だ。(岩田萌子さん・3年)
告白
湊かなえ著(双葉文庫、669円)
◆スッキリするけど悲しい
中学校教師・森口悠子の娘が中学校のプールで死亡しているのが発見され、森口が娘を殺した犯人に復讐(ふくしゅう)していくというストーリー。本の特徴は各章によって語り手が変化していくところだ。だんだんと事件の真相が明らかになっていく。人によって物事の捉え方が異なるところがおもしろい。スッキリしつつも悲しさが残る不思議な感覚に陥る作品だ。(神戸彩夏さん・3年)
この闇と光
服部まゆみ著(角川文庫、605円)
◆盲目故のトリック
盲目の少女レイアは、国王であった父親と意地悪な侍女のダフネと共に山奥の別荘で暮らしていたが、13歳の時に衝撃の事実を知る。レイア、父親、ダフネの3人で物語が進み、本の随所に最後に待ち受ける真実の伏線となる巧妙なトリックが隠されている。盲目であるレイアの視点で物語が語られているため、読み手も「よく考えれば気付くこともできる違和感」に気付かず読み進めてしまう。(大貫涼香さん・2年)
ようするに、怪異ではない。
皆藤黒助著(角川文庫、605円)
◆妖怪がらみの事件を追え
ひょんなことから高校の妖怪研究同好会に入ることになった1年生、冬目皆人。彼を同好会に引き入れたハル先輩は、妖怪は居るということを証明するため、彼の下に、妖怪絡みの事件を持ってくる。ハル先輩に振り回されつつも皆人は謎を解き明かしていく。さわやかでほろ苦い青春妖怪ミステリー! (木村明生君・2年)
そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー 著、青木久恵訳(ハヤカワ文庫 クリスティー文庫、821円)
◆読み進めるほど深まる謎
イギリス本土から隔離された孤島に集められた全く面識のない10人が、一人ずついなくなる。誰の声か分からない声が聞こえてくるという状況。人の消失が起こるたびに、まだいる人が、疑わしい人を疑うも、その人もまた消える……。謎が深まっていくおもしろさがある物語だ。(山口修太郎君・2年)
※価格はすべて税込み