学校生活の中で感じるさまざまな不安にどう対処すればいいんだろう。人形町メンタルクリニック(東京)院長の勝久寿先生に聞いた。(山口佳子)

Q.授業中に指されるかもしれないと思うと、ドキドキしてしまい、授業に集中できません。

 

A.腹式呼吸をしよう。指されたときは結論を短く言うように心がけよう。

授業中に指されるのって、確かに緊張しますよね。その背後には、きちんと自分の考えを発表したい、みんなに認められたいといった、気持ちがあるのだと思います。

そんな時は、まず、腹式呼吸をしてみましょう。しっかり息を吐ききることで副交感神経を刺激し、ドキドキの原因となる交感神経を落ち着かせて、緊張を和らげることができます。

あがったまま話すと混乱してしまう

実際に指名されたら、最初に、結論を短く言うことを心がけてみましょう。

あがっている時にそのまま話し始めてしまうと、自分でも何を言っているかわからなくなることも少なくありません。それを聞いている周囲の人が「この人は何を言っているのだろう?」と思っている無言の圧のような雰囲気も伝わってきますし、ますますあがってしまうという悪循環になりかねません。「私はこう思います」と結論から始めることで、自分自身の頭の中が整理されるだけでなく、聞いている人も最初に結果を知ることで安心するので、落ち着いて話せる雰囲気になると思います。

それでもあがってしまったら、「私、あがってしまって…」と正直に口にしてしまうという方法もあります。発表の途中で、腹式呼吸をしてみるのもおすすめですよ。

ドキドキするのは悪くない

覚えておいてほしいのは、ドキドキすることは決して悪くないということ。あがってしまった時の体験の積み重ねが、「あがり症」を克服します。成功体験だけでなく、自分で失敗だったと思うことも、決して無駄ではありません。その時にも、なぜ緊張してしまったのかと考えるのではなく、「失敗は成功のもと」と緊張の背後にあった願望や目的(この場合は、きちんと自分の意見を発表して、みんなに認められたいという願望)を達成するためにはどうすればよかったのかを考えることが大切です。適当に答えればいいや、指されても下を向いていようなど、緊張から回避しようとするのではなく、無理をしない範囲で、今の自分にできるドキドキを乗り越える方法を考えてみてください。

 

 
勝久寿先生
(人形町メンタルクリニック院長)
かつ・ひさとし 精神科専門医。著書に「『いつもの不安』を解消するためのお守りノート」(永岡書店)。