強豪私学がひしめく東京の高校男子サッカー界で健闘を続ける文武両道の公立校、駒場。120人近い部員をまとめるのが末永直輝(2年)=東京・駒留中出身=だ。(文・写真 青木美帆)

がっしりした体格に切れ長の目、短く刈り上げられた髪。その風貌から容易に想像できる熱いハートの持ち主だ。時には気の緩んだチームメートの胸ぐらをつかみ「ちゃんとやれ!」とげきを飛ばすこともあるという。「人数が多いチームだからこそ、しっかりした魅力がないと選手がついていかない」。山下正人監督(57)は、末永の熱さを評価して主将に指名した。

中学1年生の冬、駒場が全国出場を決めた試合を観戦して進学を決意した。「勝ちたい。強くなりたい」との思いから主将の大役を喜んで買って出た。張り切り過ぎたのか、就任直後から2度のけがを経験。「今まで一度も故障したことがないのに。情けないっす」と頭をかく。

バスの中でも読書

部は普段、レベルに応じた3つのチームで練習することが多い。それゆえのモチベーションの差が昨年度からの大きな課題だったが、それぞれのチームにリーダーを立て、共に戦う姿勢を伝えることで徐々に解消を図っている。伝えるときは「堂々と、相手の目を見て、明確な言葉で」。言葉選びのヒントは、多いときで月に10冊は読むという本だ。遠征のバスでも黙々と読書に励み、「車酔いしないのが不思議」と山下監督も笑う。

卒業後の進路は、まだ何も考えられない。今年、夢舞台を目指すことだけに全力を注いでいる。「1年生も下部チームの選手でも発言しやすい環境をつくっていきたい」。昨年末に「末永組」として始動したチームは、まだ動き出したばかりだ。

すえなが・なおき: 1997年2月13日生まれ。東京都出身。昨年度からセンターバックのスタメンとして活躍。政治経済や現代社会への関心が強く「新聞を読みながら通学路を歩いていた」という証言も。180㌢71㌔。