地学部地層班の(左から)上田航平君、榧本和仁君、宮﨑紫清君

木更津高校(千葉)地学部の地層班は、君津市西谷地域の地層から未報告の単体サンゴの化石発掘に成功した。

2000以上の化石を採取

サンゴは、温暖な浅い海に複数の個体が集まって生息するサンゴ礁のような「群体サンゴ」と、日本近海では水深100~300メートルに1個体で生息する「単体サンゴ」に分けられる。地層班は先輩が取り組んできた研究を引き継ぎ、単体サンゴに注目した。

調査は、根気のいる化石の採集作業から始まった。「土を掘ってふるいにかけたり、地層から直接取ったり。より多くのサンプルがあった方がいいので、2038個体を集めました」(榧本(かやもと)和仁君・3年)

地層班が収集した単体サンゴの化石

難解な英語論文読み解く

次に、最新の論文をもとに採集した化石を分類し、「属」や「種」を決定していく。ここでは難解な英語の論文に手こずった。「それぞれのサンゴの名前自体が聞き慣れない英語ですし、専門用語も多く、その説明もまた英語。一文を訳すのに数時間かかったことも」と上田航平君(3年)。また、宮﨑紫清(しせい)君(3年)も「発表にまとめるために、5ミリ前後の小さなサンゴを1つずつ写真に撮って、切り抜くのが大変」と話す。

苦労の末に3つの新発見があった。「西谷地域のある層で4種報告されていたサンゴが、実は11種あったことと、ある単体サンゴが(従来知られていた「個体の側部」ではなく)底部から分裂していたこと」(上田君)。そして、「西オーストラリアの約12万~13万年前の地層から産出報告があったサンゴを発見し、それが約40万年前にも生息していたことが分かりました。北半球での初の産出、世界最古の化石記録と分かった時は、『お~!』と沸き返りました」(榧本君)。8月に行われる全国高校総合文化祭自然科学部門の出場が決まり、集大成を発表する。

調査や研究の楽しさは、そのように「今まで知らなかったこと、知られていなかったことを発見するところ」(上田君)にある。総文祭では、「聞く人がわかりやすい内容になるように工夫したい」(宮﨑君)と、地学部員としての高校最後の活動に向けて、意気込んでいる。 (文・写真 小野哲史)

【部活データ】創部年不明。部員18人(3年生6人、2年生9人、1年生3人)。化石単体サンゴ研究では、日本古生物学会2017優秀賞や2016高校生理化研究発表会優秀賞などの実績がある。定期的な活動日は水曜日。天文班や気象班がそれぞれの研究を進める他、夏に天体観測合宿を行っている。