球磨工業高校(熊本)は、全4学科(機械・電気・建築・建設工学)で、地域に密着した研究に取り組んでいる。生徒が、地域に古くから伝わる建造物や技術などに目を向けているのが特徴だ。文化祭では、各科持ち回りで生徒が研究内容を発表している。

神社に土俵を作る球磨工業高校建設工学科の生徒たち(2016年撮影、学校提供)

研究が役立ったのが、熊本地震の起きた2016年だった。建設工学科の生徒たちはこの年、日本に古くから伝わる「三和土(たたき)」の工法を地域の高齢者などから聞き取り、研究していた。三和土は、明治時代まで堤防にも使われていたが、現在はコンクリートに取って代わられ、途絶えかけていた。

同校は被災した地域を励まそうと、熊本市内の下無田(しもむた)神社にある土俵を三和土の手法を使って新しく作り直すことを申し出て、夏休みに生徒たちで改修工事を行ったのだ。

工事の前には、学校のグラウンドの隅に土俵を試作。神社での工事の際は、地域の綱引き大会で使われていた大綱が俵用に提供され、地元の子どもたちも作業を手伝ってくれた。指導に当たった高松孝規先生は「土俵が出来上がると、地域の人たちから『ありがとう』と声を掛けられ、生徒は地域の役に立っている実感と、復興に少しでも関わることができたという自信を得られたようでした」と振り返る。

そんな先輩の姿を見てきた後輩たちも「卒業後は建設業に就き、地震からの復興はもちろん、地域の人たちの安心で安全な生活を支えるために頑張りたい」(黒木大君・建設工学科3年)と頼もしい。地域の未来の担い手が、ここから着実に育っている。(椎名桂子)