桑名工業高校(三重)のものづくり研究同好会は、リサイクルした材料を使ったボールペンを開発し、人気を集めている。

きっかけは大型台風

自作のボールペンを持つメンバー。ポスターは体験教室で使用した

ボールペン作りのきっかけは昨年9月に襲来した大型台風だった。会長の服部弘滉君(3年)は「校門横の木が倒れ、この木を何かに利用できないか」と思ったという。さらに「使われなくなった廃材を燃やしたりするのは地球環境に良くない」とボールペンとしてリサイクルすることにした。

木材は倒木や古民家の柱などの廃材、工場の製造過程で出る端材を利用。生徒たちの実習先の地元企業から提供を受けている。工程はすべて手作業だ。木材は部品の長さに合わせて直方体にカットして穴あけし、1本ずつ小型の旋盤機で切削加工している。放課後の2時間半の活動で3年生は1人10本前後製作する。

企業で学んだ知恵生かす

試作したボールペンの一部。デザインも生徒が考えた

製作が軌道に乗るまでは試行錯誤の連続だった。当初は1本を完成させるまで1人で担当していたのを木材のカットや部品の接着など作業ごとに分担した。接着剤の種類も変えた。また最初は直方体の木材からいきなりデザインに合わせて削っていたが、円柱状に削る段階を入れて効率化を図った。木材の堅さに合わせて刃の当て方、力の入れ具合を変え、加工中に割れることを防ぐなど工夫した。「企業の製造現場で学んだ品質管理、時間短縮の知恵がボールペン作りに生きている」と服部君は振り返る。

新貝爽真君(3年)は「デザインが一番苦労した」と言う。装飾の多いものからシンプルなものまで数十本試作した末、規格をそろえるためにシンプルな形にした。女性社員の多い企業からの注文には手の大きさを考えて軸を細めに作る、など対応している。

小中学生にも広める

小型旋盤でペンの持ち手を加工する。製作用の設備は地元企業から提供された

三重県教育委員会や企業などから注文は700本を超えた。市のふるさと納税の返礼品に採用されることも決定した。小中学校での体験教室も30数回を数え、舘皇元(きみちか)君は「これからは体験教室を定期化して、ものづくりの楽しさを広めたい」と意気込んでいる。

ちなみに台風で倒れた木は今も乾燥中で、いずれボールペンになる予定だ。(文・写真 木和田志乃)