江津工業高校(島根)に通う中原駿斗さん、下田悠雅さん、山根来楓(らいか)さん(ともに3年)は、廃線となった旧JR三江線沿線を盛り上げるため、乗りながら景色を楽しめるトロッコを製作した。トロッコ製作に至った理由や、地域にはせる思いについて話を聞いた。

地元の盛り上げ目指しトロッコ製作

―トロッコ製作を始めた理由やきっかけを教えてください。

一つ上の先輩が「旧JR三江線から地域課題を考える」をテーマにイルミネーション作成などの課題研究をしていて、私たちも「地域課題研究をやってみたい」と思ったのがきっかけです。自分たちなりに地域のために何ができるかを考え、今回はトロッコ製作を行いました。目標にしたのは、桜江地域の関係人口(編集部注※地域と多様に関わる人々)の増加です。

完成したトロッコ。オレンジの服を着ているのが左から下田さん、山根さん、中原さん

―地域を盛り上げることを目標にしているんですね。現在の旧JR三江線沿線はどのような雰囲気なのでしょうか。

鉄道がなくなったことであまり活気がないように感じられます。地域ごとに廃線を利用した活動やイベントが行われていますが、私たちのような若者の参加は少なく……。

私たちの高校のある江津市も、地域コミュニティーの活動の充実を目標に掲げています。私たちの活動がきっかけで、地域の活動に参加する若者が増えていくことも期待しています。

―JR三江線がなくなってから、どのような影響が出ましたか。また、そのことをどのように感じていますか?

地域のコミュニティーセンターの方に話を聞いたところ、三江線を利用していたご年配の方々は廃線をとても寂しく感じているとのことでした。旧JR三江線沿線地域へ出かけるきっかけが減ったように感じています。

地域のコミュニティーセンターでミーティング

このままでは私たちと同年代の人たちが沿線地域外へ移住し、人口もどんどん減ってしまいます。江津工業高校の生徒数も少なくなるかもしれません。

大人4人が乗っても走れる丈夫なトロッコに

―製作の流れと、それぞれの作業にかかった期間は?

まずはトロッコの車体設計をしてから材料を選びました。次に車体フレームを製作し、車輪等の足回り部品を組み立てました。モータなど動力を設置した後は、制御システムの構築、座席の製作、外装の貼り付け、という流れで行いました。昨年4月から作業を始め、設計から車体のフレームが完成するのに約3カ月、動力等の設置に約2カ月、その他作業に約2カ月かかりました。

―トロッコはどんな部分にこだわりましたか? また、製作中はどんなところに苦労しましたか?

大人が4人乗れることや、旧JR三江線を走りながら景色が楽しめることです。大人4人が乗ったときでも走行できるようなモータを選び、車重を減らすためにアルミ材を使用して軽量化を図りました。座席の高さを決める際には、景色の見やすい高さになるようにこだわりました。

初めて経験した溶接。放課後の時間も使い練習を重ねた

苦労した点は、私たちが電気コースの生徒であり、溶接が未経験だったことです。放課後等の時間も使いながらたくさん練習をして、溶接技術を身に付けました。先生方に熱心に指導していただけたことで乗り越えられたと思います。

トロッコをきっかけに三江線を知ってほしい

―昨年12月には完成したトロッコの「お披露目会」を行い、試乗イベントを開催したと伺いました。今後はトロッコを使って、旧JR三江線沿線をどんな風に盛り上げたいですか?

トロッコを川戸地域コミュニティー協議会へ寄贈し、地域イベントでの活用をしてもらいたいです。旧JR三江線に列車が走っていた様子を思い出し、懐かしい気持ちになってもらうと同時に、旧JR三江線をあまり知らない方々に知っていただくきっかけになっていってほしいと思います。

トロッコ完成後、お披露目会を行った

この地域の活動に興味を持ち、関わる人が増えれば関係人口の増加につながり、活気のある地域になることも考えています。

―トロッコの製作を通して身に付いた力や、普段の生活に生きていると感じていることはありますか?

製作を通して、地域おこし、地域コミュニティー活動の充実の重要性を知れました。課題研究を通して「自ら考え・学び・行動する」ことの大切さや、物事を進める際には調査(Research)、計画(Plan)、実践(Do)、評価(Check)、改善(Action)を繰り返す「R-PDCAサイクル」を意識して活動することを先生方から教えていただき、今後の生活で生きる力が身につきました。