少子高齢化が進み、認知症患者も増加している。そんな中、弘前工業高校情報技術科(青森)の3年生4人は、体をゲーム感覚で動かし楽しく認知症予防ができる装置を開発した。一体どのような装置なのか。代表して佐藤鳳花(おうか)さん、鈴木読(よむ)さんに話を聞いた。(写真・学校提供) 

光るボードを踏んで認知症予防

―みなさんが開発した認知症予防装置「ChihoNot(ちほなっと)」は、どうやって使うのですか?

佐藤さん 装置のスイッチを入れると、ボードに埋め込まれたLEDがランダムに光ります。利用者が光った場所を踏むと、プログラムが作動して別の場所に光が移動します。30秒から60秒間、この光を追って踏み続けると踏んだ回数がスコアとなって表示されます。

開発した「ChihoNot」。ランダムに光るボードを踏んでスコアを出す

―ゲーム感覚で楽しく使えそうですね。どのようにして認知症を予防するのでしょうか。

佐藤さん 息が少しはずむくらいの運動と脳トレを同時にこなす「コグニサイズ」が、認知症予防に効果があると知りました。光るボードを追いかけるChihoNotは、運動しつつ脳トレも促せます。

介護施設を訪問し改良重ねる

―なぜこの装置を開発しようと思ったのですか?

鈴木さん メンバーの一人、横山遊雲(ゆん)のお母さんが介護職に就いています。職場を見学した際に、認知症の方を介護する職員の方が同じ介護を何度も繰り返したり、急に怒鳴られたりする様子を目にしました。そこから「介護職の方の負担を減らしたい」と考えたことがきっかけです。

開発メンバーの4人。左から鈴木さん、横山さん、澤口さん、佐藤さん

―どのように開発を進めましたか?

鈴木さん メンバー4人で分担して作業を進めました。横山がプログラミングを、佐藤、鈴木が本体の外側やケーブルの配線等を、澤口瀧生(りゅうせい)がプレゼンテーションの作成を担当。いずれも11月に開始し、4月に行われた「第14回国際イノベーションコンテスト」国内大会の直前に完成しました。

―苦労した点を教えてください。

佐藤さん 国内大会終了後にデバイスの改良に取り掛かったのですが、「どうすればより効果が出るか」が分からず苦労しました。実際にコグニサイズを行っている介護施設を訪問して高齢者の方に使っていただき、「スコア表示や残りの秒数の表示を明確にしてほしい」などと意見や改善点を聞きました。それによって自分たちがやるべきことが明確になり、表示ディスプレーを付けるなどその後の作業をスムーズに進められました。 

介護施設で実際に使用してもらったときの様子

新機能追加に向けて模索

―開発を通して身に付いた力や、日常生活の中で役に立っていることはありますか?

佐藤さん これまで学んだ知識のみでは作りたいものが作れなかったため、新たなプログラミング言語を習得したり、配線について学んだり、時には専門の先生方の力を借りたりして少しずつ開発を進めました。新たな技術を習得できたことはもちろん、すでに知っていた知識をより深められました。

―今後の展望を教えてください。

佐藤さん 世界大会に参加してみて、一番の課題は英語力だと感じました。プレゼンはあらかじめ作れるものだったので準備しましたが、すべて英語で進行するため、プレゼンに対する質疑応答の英語力が不足していました。英語を聞く力・話す力があったら、もっともっと楽しめたと思います。

また、具体的には考えられていないのですが、「ChihoNot」に新たな機能を追加したいです。それぞれのメンバーの進路決定後、改善へと進めていきたいです。