昨年10月、地元で宝飾店を営む佐々木康晴さんから螺鈿(らでん)細工のアクセサリーの制作依頼が横須賀工業高校(神奈川)に持ち込まれた。機械科の見上春音さんと渡邉拓海君(ともに現2年)が協力を快諾し、螺鈿細工のアクセサリー作りが始まった。

横須賀工業高校の生徒が作る螺鈿細工のアクセサリー

螺鈿とは、貝殻を削ると現れる虹色に光る部分を加工して、漆器などの工芸品の飾り付けに用いる装飾技法のこと。材料となる貝殻は、螺鈿細工のプロジェクトを通じて交流を持つようになった東京大学三浦臨海実験所や佐々木さんがアコヤ貝やアワビを提供してくれた。

授業で学んだ技術生かす

早速2人は、何枚もの貝殻をヤスリで薄く磨きあげ、螺鈿細工に使用する貝の光沢部分を現す作業から取り掛かった。「この作業がもっとも手間と時間がかかるんです。ですが、授業で金属をヤスリで磨いた経験を生かし、程よい力加減で作業できています」(渡邉君)

装飾のバリエーションを増やすために、2人はポンチ(ドリルで穴を開ける箇所に目印を付けるための工具)の先端部分を星やハートの形に加工したオリジナル工具を制作。この工具を使い、星や花、ハート型の貝の装飾も螺鈿細工に加えられるようになった。

校章入りスマホケースも

横須賀工業高校の生徒が作る螺鈿細工のアクセサリー

細かく砕いた貝をモザイクアートのように散りばめ、見上さんがデザインを考えた「ひまわり模様のストラップ」と「桜と同校校章入りのスマホケース」が約2週間で完成。佐々木さんから完成品を絶賛され、2人は次なるアクセサリー作りに意欲的に取り組んだ。

横須賀工業高校の生徒が作る螺鈿細工のスマホケース

見上さんは、UVレジン(紫外線に当てると固まる液体)と螺鈿細工を組み合わせた「髪どめ」や「タイピン」などを制作。今年度からは大竹智也君(2年)がメンバーに加わり、週3回のペースで制作を進めている。見上さんは「螺鈿細工の箸や日本伝統の工芸品を作りたい。いずれは商品化できれば」と、夢を膨らませる。(文・写真 中田宗孝)