第96回全国高校サッカー選手権が12月30日から1月8日にかけて行われ、前橋育英(群馬)が流通経大柏(千葉)を破り、初優勝を遂げた。絶妙なプレーで大会を盛り上げた選手を紹介する。(文・茂野聡士、写真・幡原裕治、茂野聡士)

田部井涼 頼れる主将 チームを日本一に導く

田部井涼(たべい・りょう=群馬・前橋育英3年)

頼れるキャプテン、中盤の核としてチームをまとめ、同校を初の選手権日本一に導いた。今回の選手権では3回戦の富山第一(富山)戦で膝上を打撲。準々決勝と準決勝は欠場したものの、チームは副将・塩沢隼人らが主将不在をカバー。田部井涼は決勝進出後「チームメートが勝ってくれると信じていた。決勝の場に連れてきてもらい本当に感謝したいです」と話した。

決勝の舞台では、ダブルボランチを組む塩沢と絶妙な連携を見せ、試合終了間際の劇的な決勝点によって悲願をつかむと、人目をはばからず涙した。1年前の決勝では青森山田(青森)に0-5の大敗。その雪辱を果たす勝利に「人生で一番うれしいです」と話した。

田部井涼(群馬・前橋育英3年)

 

 

田部井悠 双子の兄とコンビ、攻撃の要 

田部井悠(たべい・ゆう=群馬・前橋育英3年)

1年前の高校選手権、2年生が中心だったチームの中で注目を集めたのは田部井涼と田部井悠の双子コンビだった。ただ弟の涼が盤石のレギュラーの一方で、悠は控えに回るケースもあった。しかし新チームで悠も定位置を確保。兄弟でインターハイに出場、そして選手権では2人で攻撃を促進した。

涼とは「小学生の頃から、10年間にわたってチームメートとしてやってきました」と最後に日本一に輝いたハッピーエンドを噛みしめた。2人は卒業後、違う大学へと進んでサッカーを続ける。「生まれて初めて対戦相手として戦うことを楽しみにして、努力を続けたいです」

田部井悠(群馬・前橋育英3年)

 

飯島陸 決勝終了間際にチャンス作った得点王

飯島陸(いいじま・りく=群馬・前橋育英3年)

飯島は2年時、得意のドリブルでチャンスを作り大会優秀選手に選ばれたが、ゴール数は1点にとどまったこともあり、今大回は得点への意欲を強めて挑んだ。それをいきなり結果で示したのは初戦の初芝橋本(和歌山)戦の4得点。これで勢いに乗った飯島は準決勝・上田西(長野)戦で2得点を挙げるなど7ゴールで大会得点王となった。

迎えた決勝戦は流通経大柏(千葉)の三本木達哉(3年)の徹底的なマンマークに苦しんだが「自分にマークが来れば、味方のスペースが空くはず」と献身的にプレー。終了間際の決勝ゴールに繋げる裏への飛び出しとシュートは、得点と同等以上の価値があった。

飯島陸(群馬・前橋育英3年)

松田陸 鋭い読みで相手の攻撃塞ぐ

松田陸(まつだ・りく=群馬・前橋育英3年)

今大会で活躍した選手の多くが卒業後、Jリーグの舞台へと移る。その1人が松田だ。同じくプロ入りが決まっている渡邊泰基らとともに安定感抜群の4バックを構成した。決勝の流通経済大柏戦では、前橋育英の攻撃陣が相手の堅い守備を崩そうと前がかりになる中でも「最終ラインのうち3人、ボランチのどちらかが残ってカウンターに対応できるようにバランスを取りました」と統率。鋭い読みで相手の攻撃の芽を摘んだ。

卒業後はJリーグ有数の強豪、ガンバ大阪に入団する。「トップチームでレギュラーを取って、その後は代表を目指していきたいです」と高校3年間での成長を胸に、プロへの道を進む。

松田陸(群馬・前橋育英3年)

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