第70回全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)男子決勝が1月8日、東京体育館で行われた。鎮西(熊本)が洛南(京都)をストレートで下し、21大会ぶり3度目の優勝を決めた。(文・田中夕子、写真・中村博之)
ストレート勝ち決める 主将・鍬田がチーム牽引
最後のサーブに、主将の鍬田憲伸(3年)はすべての思いを込めた。「これまでキャプテンとして、エースとしてたくさんの迷惑をかけてきたので、監督や家族、支えてくれた人たちに春高で恩返しがしたかった。感謝を込めて、とにかく思い切り打ちました」
強烈なジャンプサーブを何とかレシーブするも、ダイレクトで返って来たボールを1年生エースの水町泰杜がスパイクし、25-23。セットカウント3-0のストレート勝ちを収めた鎮西(熊本)が21大会ぶりとなる日本一の称号を手にした。
鍬田、水町の2枚エースを攻撃の軸にインターハイを制し、大会前から優勝候補と目されたが、簡単に勝てるほど春高は甘いものではない。初戦の埼玉栄戦からフルセットにもつれ込むなど、苦しい展開を強いられたが、畑野久雄監督は「インターハイも同じように初戦、2回戦と厳しい戦いだった」と言い、そんな状況を打破するために、期待を込め、檄を飛ばしたのが鍬田だった。
「ここで勝つためには『お前が頑張らんとダメだぞ』と。最後の最後、特に準決勝、決勝は鍬田が期待に応えて大活躍してくれた。本当にいいキャプテンになった。よく頑張りました」(畑野監督)
体育館が被災して半壊 1時間かけて練習場へ通う日々
2016年4月に熊本地方を中心にした地震で甚大な被害を受け、体育館も半壊。今も1時間以上かけて練習場所へバスで移動し、限られた練習時間で技や体力を磨いた。決して十分な練習量があったわけではないが、畑野監督が「その分練習試合を例年よりも多くできたのをプラスと思って臨んだ」と言うように、試合の中で築き上げた技とチーム力を最後の春高で発揮した。
「最後は絶対勝ちたい」有終の美飾る
特に攻撃の中心として、苦しい場面やここぞ、というところで得点を取ったのが鍬田だった。自身が1年生の時、初めての春高では決勝進出を果たしながらも東福岡に敗れて準優勝。昨年は初戦敗退を喫していただけに、最後は絶対に勝ちたい。並々ならぬ思いで臨んだ春高で、ようやく悲願の日本一になった。
「地震で練習環境も整わない中、苦しいことは何度もありました。だからこそ、みんなに恩返しがしたかったので、最後に勝てて本当によかったです」(鍬田)。目を輝かせ、優勝の喜びを噛みしめた。
- 【チームデータ】
- 1949年創部。部員22人(3年生9人、2年生4人、1年生9人)。96、97年に春高バレー連覇。主な卒業生に朝日健太郎(元ビーチバレー日本代表、現・参議院議員)など、多くの卒業生をVリーグや日本代表に輩出した。