ムスリム向けの宿泊施設について説明する大橋さん(左)と小原さん

大阪・豊中高校の大橋由佳さんと小原志穂さん(ともに2年)は、訪日する多くのムスリム(イスラム教徒)が、礼拝場所や食のタブーへの配慮の少なさに不満を持っていると書籍で知った。そこで、ムスリムが望む宿泊施設を調べた。(文・写真 木和田志乃)

食の対応にばらつき

2人は、ムスリム向けに施設を紹介するウェブサイトからホテルをピックアップし、9月と10月に大阪のホテルを1軒ずつ訪問。また、国内各地のホテル5軒にアンケートを依頼し、食事や礼拝などへの対応、ムスリムの反応などについて調べた。

その結果、「ムスリム対応」をうたう施設は礼拝所の設置、礼拝用マットの貸し出し、聖地の方角表示などの取り組みをしていた。食事では、豚やアルコールが含まれていない食材を使ったり、混入を避けるための専用の調理場を備えたりする施設があるなど、対応はホテルによって異なっていた。

一方、ムスリムでも戒律に対する考え方は宗派や地域、個人で差が大きく、戒律を気にしない人も多いと知った。ムスリムに好評だったのは天ぷらや和牛を使った和食、畳やふすまのある和室などで、日本文化に関心があることもうかがえた。

日本文化体験も必要

調査から「ムスリム向けの対応があり、かつ日本文化が体験できる施設が理想的」と分析。今後、施設側がどう具体的に対応するべきかを考えていくという。大橋さんは「日本に良い印象を持ってほしい。ムスリム向けの対応は費用がかさむので、コスト面との折り合いが課題」と話した。

研究前はイスラム教について「食べ物や服装の決まりが厳しい」という程度の認識だった小原さんは研究を通じて「ムスリムに親近感が湧いた」。ホテルのスタッフから「ムスリムへの対応はさまざまな嗜好(しこう)を持つ人への対応と同じ」と聞き、多様な文化を尊重する姿勢を学んだことも収穫だった。

【豊中高校】
2015年度SGH指定。イスラム文化、フェアトレード、環境問題などを通して、多様性を読み解く視点を持ち、世界をけん引する人材を育成。