女優の広瀬アリスさんには、大切にしている映画作品があるという。「役者としてこう在りたい」。高校時代に見たその映画を今も時折見返しては、演技に役立てている。映画からどんなことを学んだのか、語ってもらった。(文・中田宗孝、撮影・田部翔太)
役者の在り方、映画で学ぶ
芸能活動で忙しい日々を過ごしていた17歳の時に、1本の映画に出合った。米国映画「バーレスク」だ。
物語では、嫉妬から生まれる離別など、複雑な人間模様がリアルに描かれている。歌手になる夢を追うヒロインの名前が広瀬さんと同じ「アリス」だったことで、より物語に惹かれていった。「登場する女性たちがキラキラと輝く姿に共感しました。単純明快な成功物語ではない展開も好き。今でも時々見返すほど、大切な映画になっています」
女優として注目され活躍する現在は、高校時代とは違った「役者目線」でバーレスクを鑑賞することも。「かわいく撮られようとしない女優たちの姿勢を見習っています。自分のダメな部分すらも、包み隠さずカメラの前にさらけ出すというか。私も役者として、そう在りたいと思っています」
まばたきしない演技に苦戦
公開中の映画「氷菓」では、ヒロインの高校生・千反田(ちたんだ)えるを演じた。好奇心旺盛な人柄を象徴するせりふ「私、気になります!」は、物語を動かす重要なフレーズだ。このせりふを発する時の所作に苦戦した。「このせりふを言う時は、まばたきをしないという約束事がありました。生理的な機能をコントロールするのはなかなか難しいんです。コツなどなく、慣れですね(苦笑)」
リハーサルは他の現場と比べて長く、入念だったという。「事前に台本を読み込んで演技を作り込むよりは、監督からの指示に何でも対応できるように自然体でリハに臨みました」
今を目いっぱい楽しんで
現役高校生に「今を目いっぱい楽しんで!」と伝えたいという。仕事で、高校の行事はほぼ参加することができなかったからだ。「高校生としては後悔があります。今の高校生がちょっとうらやましいくらい……(笑)」と打ち明ける。
悩みや将来の不安を抱えながら毎日を過ごす人には「そんな状況を前向きに楽しんで」とエールを送る。「大人になると『あのころの』つらく苦しい出来事全てが思い出になる時が来ます。だから今、この瞬間を全力で頑張って」
『氷菓』
神山高校古典部に入部した折木奉太郎(山﨑賢人)は、同じ部の同級生の千反田える(広瀬アリス)の並外れた好奇心に振り回されながら、33年前に学校で起きた事件の解決に挑む。米澤穂信の同名小説を実写映画化。配給:KADOKAWA。全国公開中。
- 【ひろせ・ありす】
- 1994年12月11日生まれ。静岡県出身。2008年、映画「死にぞこないの青」で女優デビュー。放送中のNHK連続テレビ小説「わろてんか」に出演中。18年2月3日公開の映画「巫女っちゃけん。」で主演。
ヘアメーク:宮本愛 スタイリスト:櫻井まさえ(Irakusa)