三田祥雲館天文部の生徒ら

9月上旬、太陽表面で起こる爆発現象「太陽フレア」が発生し、その規模の大きさと地球への影響が報じられ話題になった。兵庫・三田祥雲館高校天文部は、太陽フレアと黒点の関係をテーマに研究を重ねている。目指しているのは、太陽フレアの発生時期の予測だ。(文・写真 木和田志乃)

40年分のデータを解析

天文部は2013年から、黒点の面積と寿命の関係などを調べるために晴天時の朝昼夕、望遠鏡とカメラで太陽を観察してきた。専門家の助言もあり、昨年7月からは太陽フレアと黒点の関連に注目し、イギリスのグリニッジ天文台や米国のウィルソン山天文台など世界各地で観測された、黒点やフレア発生に関する約40年分のデータを集め、表計算ソフトを使って解析した。調べた黒点の数は1万2000個に上り、黒点1つにつき面積や磁場など10以上の項目について調べたという。

地道な作業をコツコツと積み重ねる日々。部長の渡邉歩君(2年)は「データ数が多くて大変だったが、グラフを作れば誰も見たことがない形ができる。毎日、新しい発見があり楽しかった」と振り返る。

黒点との関連性を確認

太陽の黒点は約11年サイクルで増減を繰り返す。解析の結果、黒点数がピークを過ぎて減少期に入ると、2年以内に複雑な磁場を持つ黒点が増え、それとともに大規模なフレアが起こることを突き止めた。この研究は、今年の全国高校総合文化祭(みやぎ総文2017)の自然科学部門地学部門で最優秀賞に輝いた。

宇宙天気予報 実現したい

現在のサイクルで黒点数が最多になったのは2015年だ。2年後の今年9月、太陽フレアを観測した。前部長の溝口智貴君(3年)は「自分たちの主張が裏付けられた気がする」と話す。

大規模な太陽フレアは「磁気嵐」を起こし、停電や通信障害などの被害が出る可能性がある。また、発生した場所によって地球への影響の大きさも違うという。そのため発生時期や場所を予測できれば事前の対策が可能になる。「将来は三田祥雲館から太陽フレアの発生を予測する『宇宙天気予報』を実現し、発信したい」(渡邉君)

大きな目標に向けて、まずはどのような性質を持った黒点が増えたときにフレアが起こりやすいのか研究を進めていく予定だ。成果は英語論文にまとめ、学術雑誌に投稿するという。

生徒が撮影した9月10日の太陽。右下に「フレアループ」というガスのトンネルを捉えた(学校提供)
【部活データ】
2010年創部。部員10人(1年生5人、2年生5人)。活動日は火曜を除く平日の午後5時30分まで。年1回、小学生向けの「祥雲星空教室」を開き、自分たちで加工、組み立てをした口径35㍉の望遠鏡で星空を案内している。
望遠鏡で太陽の像を紙に投影させて、黒点の位置などをスケッチする生徒たち(学校提供)