日本人選手の活躍が記憶に新しいロンドン五輪だが、青年海外協力隊員として参加した日本人もいる。藤後あさみさんだ。中学から続ける柔道経験を生かし、スポーツ分野の協力隊員として、エルサルバドルの柔道コーチを務めている。これまでの歩みと、ロンドンでの経験を聞いた。

 

藤後さんが柔道指導のためエルサルバドルに赴任したのは2011年6月。10月にはナショナルチームの練習に合流し、男女6人の強化指定選手の指導にあたることになった。藤後さんはまず、走り込みや筋トレなどの練習時間を設けることを提案。ところがトレーニングの大切さをなかなか理解してもらえず、時間になっても選手や現地指導者が集まらないなど、精神的につらい日々が続いた。そんな中、当初からトレーニングに積極的に参加していたフィゲロア選手が国際大会で初勝利を収めることができ、五輪出場を決めたのだ。

ロンドンでは、対戦相手の分析や体力トレーニング、食生活の管理など、代表選手の最終調整に尽力した。フィゲロア選手は残念ながら初戦敗退してしまったが、「4年後のブラジルに向けて、これからが本当のスタート」と話す。

藤後さん自身は中学から柔道を始めた。高校には柔道部がなかったため、地元の道場に通う。大学ではより柔道に打ち込みたいと名門柔道部のある天理大学に進学したものの、「インターハイなどで実績を残してきたほかの選手との力の差にがくぜんとして……」退部を考えたことも。それでもあきらめず柔道を続け、最終的には副キャプテンを務めた。海外遠征の経験や留学生のチームメートの影響もあり、海外での柔道指導に興味を持つようになったという。好きな言葉は「継続は力なり」。「あの時、柔道を諦めていたら、私が五輪に参加することもなかったでしょう」

協力隊員を経験して、柔道の指導法をより深く学びたくなったという藤後さん。2年の任期を終えたら大学院に進み、スポーツ医学や栄養学などを学ぶ予定だ。 (山口佳子)

青年海外協力隊

JICAが実施する海外ボランティア派遣制度。募集年齢は20~39歳で、派遣期間は原則2年。分野は農林水産、保健衛生、教育文化、スポーツなどの8部門120職種。アジア、アフリカ、中南米、大洋州、中東の約80カ国で活動している。