どちらが勝っても初優勝となる第91回全国高校サッカー選手権の決勝は1月19日、東京・国立競技場で行われ、鵬翔(宮崎)が、京都橘(京都)を2-2(PK5-3)で下し、宮崎県勢初の優勝を成し遂げた。 (文・石井宏美、写真・幡原裕治)

1、2回戦は無得点に終わり、かろうじてPK戦を制し勝ち上がってきた。なかなか本来のサッカーができない。だが、彼らには負けられない理由があった。2012年1月に、松崎博美監督(62)の長男でサッカー部OBの康博さんが34歳の若さで他界。「先輩のために勝つ」を合言葉にチームは一つにまとまっていた。

一周忌法要の前日、1月5日に行われた準々決勝で強豪・立正大淞南(島根)を破り、ベスト4進出を決めた。主将の矢野大樹(3年)=宮崎・大塚中出身=は「みんなで、監督のためにも準決勝(国立競技場)へ行こうと誓っていた」と振り返る。一度、宮崎に戻ったチームは、主力全員で康博さんの墓を訪れ、活躍を誓った。

準決勝では、今大会3度目となるPK戦の末に星稜(石川)を下し、決勝の切符を手にした。決勝も京都橘に先制され、リードを許す苦しい展開だったものの、終了間際に追い付く粘りを見せる。延長戦でも決着がつかず、大会4度目のPK戦で勝利を手に入れた。

とにかく走り込んだ夏の〝 地獄〟の合宿。体も、そして心も鍛えられた。そんな日々に裏付けされた自信が、どんなに劣勢に立っても諦めない気持ちを養い、快挙を達成した。

【TEAM DATA】
1983 年創部。部員74 人。今大会までの選手権での最高成績はベスト8。今季はプリンスリーグ九州2部で2位に。選手権後に行われた新人戦宮崎大会では準決勝で日章学園、決勝で宮崎工を破り、優勝した。