高校生にもおなじみの100円ショップ・ダイソー。日本では4625店舗、海外では1045店舗を展開しているんです(2025年2月現在)。海外展開の中でもインドや中東地域の店舗運営に携わる吉野凌平さんに、仕事のやりがいや楽しさを聞きました。(聞き手・尹雨欣、江間衣里佳=高校生記者、構成・黒澤真紀、写真・椎木里咲)
1000店舗以上を海外展開
―現在の海外展開状況(国・地域、店舗数など)を教えてください。
世界26カ国と地域で計1,045店舗を展開しています(2025年2月末時点、日本を含む)。地域別では、アジアとアメリカで店舗数が多いです。
―吉野さんのお仕事内容は?
インドとUAE、カタール、クウェート、オマーン、バーレーン、サウジアラビアの中東6カ国の代理店担当をしています。代理店担当は、現地でダイソーの店舗を運営している会社とやり取りし、販売や運営をサポートする役割です。現地訪問は年に1~2回。今年はお盆明けにUAEやカタール、オマーンなどを2週間ほどかけて回りました。

インドでは文具や化粧品が人気
―海外だと、日本とは売れる商品に違いはありますか?
例えば、日本のダイソーでは日用品や消耗品がよく売れます。一方、インドでは、消耗品は市場の方が安く買えるので、代わりに文具や化粧品、食器が人気です。
インドの学校はノートではなくホワイトボードに板書をするので、長持ちし、色も豊富な日本製のホワイトボードマーカーがよく売れます。他には、10月から11月ごろには光と色の祭「ディワリ」があるので、色付きのロウソクや、日本では「推し活」用に売られている光る棒が特に売れます。

宗教や文化の違いに配慮
―現地のスタッフとはどうやり取りしているんですか?
普段は電話やメール、オンライン会議が中心で、英語でやり取りをしています。現地から「この商品が欲しい」と依頼があれば手配し、出荷できるよう社内で調整します。売り上げデータを分析して「この商品は他の国で売れているので、発注を増やした方がいい」などの提案もします。アドバイスの方法は基本的にどの国も同じですが、宗教や文化の違いには配慮しています。

各国の規制対応にも力を入れています。例えば化粧品では、日本では使える成分が海外で使えないこともあります。国によって規制の内容や厳しさが異なり、提案したい商品が使えるかどうかで、品ぞろえも大きく変わります。化粧品や日用品は中東やインドで規制が厳しく、パッケージや書類、登録など出荷するために社内で細かな調整が必要です。
インドの新店舗に「スタッフが来ない!」
―一番力を入れたプロジェクトを教えてください。
インドで新しい店舗をオープンする際、現地スタッフと一緒にレイアウトづくりから関わり、出店時には実際に現地へ行ってフォローしました。初めて担当した海外店舗がインドだったので、印象に残っています。
―海外ならではの壁もあったと伺いました。
日本では近隣店舗のスタッフが集まり準備できますが、インドはまだ店舗数が少なく、出店経験のないスタッフさんに作業を進めてもらわなければなりません。一番焦ったのは、400本の備品が届くはずだったのに40本しか届かなかったときです。遠くの店舗から船で運んでもらいましたがサイズが合わず、現地業者に急きょ対応してもらいました。
―日本とはまったく環境が違いますね。現地スタッフとのやり取りで大変なことはありましたか?
現地の代理店スタッフは「絶対にオープンさせるぞ!」と熱心なのですが、立ち上げのスタッフさんは時間通りに来ない方も多く……そこは生活習慣や文化などを汲み取り集合時間を20分早めたり、陳列は開店後に整えたりするなど妥協点を工夫。何とか予定通りオープンまでこぎつけていただきました。
「ずっと待ってた」の声が聴きたくて
―やりがいを感じる場面はどんな時ですか?
現地の人と苦労しながらお店を立ち上げられたときや、日本人が多く住む海外の地域で新店舗をオープンし、初日に来店したお客さんから「ずっと待っていました」と声をかけてもらえたときです。
ダイソーを知っていたインドの人が「インドにもできてうれしい」と笑顔を見せてくれました。お客様の喜びの声や表情を受け取った瞬間、がんばってきてよかったと思います。
―海外とのお仕事だと、仕事と私生活のバランスはうまく取れるのでしょうか。
週5日勤務で、土日が休みです。インドとは3時間半、中東とは5時間の時差がありますが、やり取りはメールや電話が中心なので影響はありませんよ。

「楽しく働ける環境」が決め手
―製造小売業界を選んだ理由を教えてください。
業界で選んだのではなく、「ダイソーで働きたい」と思って入社しました。僕は千葉経済大学出身で、3年の時に1年間オーストラリアに留学していました。その際、オーストラリアで企業の合同説明会が行われていて、ダイソーのブースを訪ねたんです。
担当者のみなさんが自分たちの仕事を楽しそうに話す姿にひかれました。特定の業界志望はなかったので、楽しそうに働ける環境が良いと思ったんです。
野球に打ち込んだ経験が生きている
―今の自分に影響を与えている高校・大学時代の経験はありますか?
小学1年から大学2年まで野球を続け、仲間と一つの目標に向かって頑張った経験が今の自分を作っていると思います。監督やコーチに言われた「知らんぷりするほど無責任なプレーはない」は忘れられません。
仕事で課題やトラブルが起きたときも見て見ぬふりをせず、自分が助けられる部分は自ら動いて解決に向けて取り組むようにしています。
―高校生・大学生の間に、何をやっておくとよいでしょうか?
野球はやっておいて本当に良かったです。仲間と目標に向かう経験は、社会人になっても生かされると思います。
アルバイトもよい経験になりました。留学中に働いたオーストラリアの飲食店で、自分で見て覚える大切さを学んだのもためになりました。
【高校生記者の取材後記】「海外の仕事」に興味が湧いた

現地のニーズに応えるだけでなく、文化に合わせて一緒に仕事を進めていたり、実際の業務の多くが国内での地道な事務作業や連絡業務で驚きました。細かな作業の丁寧な積み重ねが、大きな成果につながっていると学びました。
私は国内で働くのが当然だと思っていましたが、取材を通して海外に関わる仕事にも興味が湧き、視野が広がったと実感しています。(高校生記者・尹雨欣=2年)
【高校生記者の取材後記】決断力のある大人になりたい
私や家族にとってダイソーの商品はかなり身近。想像以上に海外展開に力を入れていて、何よりもオープンな社風に感銘を受けました。社員の方同士が和気あいあいとしていて、「自分もこんな企業で働きたいな」と、大人になるのが待ち切れなくなりました。
トラブルがあった時のエピソードでは、お話を聞いているだけで、テキパキと臨機応変に対応されたと伝わりました。「自分も決断力のある大人になりたい」と大人になった時の目標ができたように感じます。(高校生記者・江間衣里佳=1年)
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株式会社大創産業
1977年設立。本社は広島県東広島市。従業員は正社員745人、臨時従業員は約2万4750人(2025年2月末時点)。国内4625店舗(DAISOブランド・3893、Standard Products・172、THREEPPY・560)と海外1045店舗を展開。連結売上高は約7242億円(2025年2月末期)。日用品を中心に低価格・高品質の商品を提供。100円ショップのパイオニアとして、国内外で暮らしを便利にする商品を届け続けている。