モバイル通信や固定通信事業で知られるKDDIは、通信基盤やAI、データを活かしたスマートシティにも事業を広げています。JR高輪ゲートウェイ駅に直結する新しい街づくりのアプリ開発を担当する、入社5年目の若手社員・山本ひかるさんに、仕事のやりがいやチームで働く面白さを聞きました。(黒澤真紀)
未来の都市づくりを通信で支える
―現在の担当業務は?
JR東日本様と一緒に「TAKANAWA GATEWAY CITY」のアプリ開発に携わっています。
―「近未来感がある街」だと話題ですよね。
東京都港区の高輪ゲートウェイ駅周辺で進められている再開発エリアで、3月に一部が開業し、2026年春に全体がオープンします。JR東日本様とKDDIが協力してつくっている未来型の街です。

例えば、街のデータを一元管理する「都市OS」、来街者に合わせた情報を提供する「まちアプリ」、自律運転で案内や配達を行うロボットといった最新のデジタル技術が導入されています。
使いやすいアプリのデザインを考案
―どんなアプリを作ってるのですか?
施設内のマップやイベント情報、フリーWi-Fiの接続機能などを搭載したアプリです。私は6人のチームメンバーの1人で、主にUXデザインの担当です。

―UXデザインとは?
UXとは、「User eXperience(ユーザーエクスペリエンス)」のこと。ユーザーに使いやすいデザインを工夫しています。具体的には、アプリの画面の構成や操作の流れ、ボタンの配置、情報の見せ方などを考えています。
私は約1年4カ月前から携わっており、街の構想段階から参加しています。アプリにどんな機能を載せるか、どんな使い方がふさわしいかをJR東日本様と一緒に考えながら、設計を進めてきました。都市の魅力をアプリでどう伝えるかを試行錯誤する毎日です。

技術の壁はチームで乗り越えた
―仕事で苦労した経験は?
アプリを使う人にとってだけでなく、運営する側にとっても扱いやすく、修正や追加がしやすい設計にするのは、予想以上に難しかったです。
私はプログラミングなどの技術に詳しくなかったため、開発メンバーに相談しながら設計を進めました。多くの部署と調整が必要でしたが、チームのリーダーが全体の調整役を担ってくれたおかげで、私はデザインに専念できました。一人で頑張ろうとせず、チーム全体で乗り越えられたと実感しています。
「イメージの具体化」に達成感
―仕事のやりがいはどんなときに感じますか?
表現が難しいのですが、イメージを開発可能なかたちに具体化していく作業は達成感があります。
例えば、現在進めているアプリでは、TAKANAWA GATEWAY CITYの洗練された印象をアプリのデザインでどう表現するかが大きなテーマ。色合いや文字の配置、情報の出し方など細かい部分にこだわりながら、街の雰囲気に合ったデザインを目指しています。

ユーザーだけでなく、運営する人のメンテナンスの負担が大きくならないように配慮するのも大切です。
私がまずアイデアを絵にして、チームメンバーにコメントをもらいます。知恵を出しあって作り上げるのは面白いですね。
部活動で学んだ「目標を共有する力」
―どんな高校生でしたか?
勉強だと、物理と数学が得意で、部活は吹奏楽部でフルートを吹いていました。
部員が50人ほどいた中で、練習に対する温度差があり、全員が同じ方向を向くのは難しいと感じた時もありました。共通の目標を持てなければ、物事が前に進みにくいと実感した経験は、今の仕事にもつながっています。チームで目標を共有しながら動く意識は、高校時代に培われました。今も仲間とフルートを演奏していますよ! 良い気分転換です。
大学で学んだ「使いやすさ」のデザイン
―大学では何を学びましたか?
工学部で、デザインと情報に関する分野を専攻しました。もともとデザインに興味がありましたが、絵やアートではなく、人にとってわかりやすく、使いやすいデザインに関心があったんです。人間工学や認知科学も学びました。

ウェブサイトの画面や操作の見た目であるUI(ユーザーインターフェース)について研究しました。HTML(ホームページをつくるための基本的なプログラム)を一から書いて、「良いデザインとそうでないものの違い」を理解できるようになった経験は大きかったです。さらに学びを深めたいと思い、大学院の修士課程にも進みました。
「考え続ける力」が身についた
―学んだことが仕事にどう生きていますか?
研究ではすぐに正解が出ない場面が多く、あきらめずに考え続ける力が身につきました。チームで話し合いながら、答えを探していく姿勢も養われたと感じています。今の仕事でも、まだ世の中にないサービスを考えることが多く、明確な正解がない中で進めていく点が、研究に似ています。

「伝える力」が求められる
―通信業界を選んだ理由は?
通信は社会のインフラ(生活や仕事を支える基盤)であり、幅広い分野と関わることができます。多くの人や仕組みとつながりながら働ける点に魅力を感じました。
―働くことについて、働き始める前と後でギャップはありましたか?
自分の考えを相手に伝えるのは想像以上に難しかったです。チームで動くには、「なぜこのデザインにしたのか」を言葉で説明する必要があります。理由が伝わらなければ、どれだけ良い案でも理解されません。説明する力の大切さを強く感じました。
一歩踏み出せば未来は広がるよ
―高校生へのメッセージをお願いします。
少しでも気になった分野があれば、実際にその道で働いている人に会いに行ってみてください。講演会に参加したり、大学のゼミを見学したり、小さな行動が未来をひらくきっかけになるかもしれません。
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KDDI株式会社
2000年発足。従業員6万4636人(2025年3月、連結)。連結売上高5兆9180億円(25年3月期)。25年度の新卒採用数267人。本社・東京。モバイルブランド「au」を始めとした携帯電話事業、通信基盤を活かしたDX事業などを展開。金融やエネルギー、コンテンツメディア事業なども手掛ける。