井上稀央(まなか)さん(北海道・北海道帯広緑陽高校3年)の彫刻作品「LIFE(ライフ)」を紹介します。流木に「家」を飾り付けたこの作品は、全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)の美術・工芸部門に出品されました。どのように制作したのか聞きました。(写真・学校提供)

LIFE(第48回全国高等学校総合文化祭 清流の国ぎふ総文2024 美術・工芸部門出品)

― 流木に注目したのはなぜですか?

私は小学5年生から流木を使った制作を始めました。流木は自由に世界中を旅してさまざまな経験を積んできた、唯一無二の存在です。ありのままの自分でいることの大切さを教えてくれます。海岸を歩きたくさんの流木に出会う中で、それぞれ魅力があると気づきました。

制作者の井上稀央さん

流木に人々の人生を重ねて表現

―作品のテーマを教えてください。

流木がたどり着いた道のりが違うように、普段の生活の中でも出会う人、ただすれ違う人それぞれに人生があり、「その人にしかない魅力」があります。そんな「それぞれの人生」を、毎日帰る場所であり、人生の多くを過ごす「家」を通して流木の上に表現しました。

ここで暮らす人々の人生や、「自分ならどう過ごすか」など、想像を膨らませて見てほしいです。砂浜で眠っていた流木が作品として生まれ変わったように、自分の人生も自由に作っていけると感じてもらいたいです。

色使いや流木の組み合わせ方に工夫

―こだわったり、工夫したりしたポイントはどこですか?

おととし「かごしま総文」に参加した際、たくさんの色が使われた面白い形の作品が、より見る人を楽しませると感じました。その経験を生かし、色の使い方や流木の組み合わせ方、ストローや竹串といった身近な素材の活用にこだわりました。

「ミニチュアを作る」というより、自分が小さくなって作品の中に入り込み、実際に過ごせる建物や空間を作っている感覚でした。東京芸大の先生が「明るく楽しい作品」と評価してくださったことがとてもうれしかったです。

流木にたくさんの家が載せられている

「運命の流木」を探し海に通った

―難しかった点、苦労した点はありましたか?

何度も海に通っても、なかなか運命の流木に出会えませんでした。やっと見つけた木は中が腐っていて、また探し直さなければならないハプニングもありました。制作期間も、かなり短くなってしまいました。

時間がない中で自分の作りたいものをどんな素材でどう作るか、納得のいくものを作り上げることが本当に大変でした。アイデアが浮かばず悩み、何度試行錯誤してもうまくいかずに大泣きした日もありました。

勉強と作品作りの両立に奮闘

―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?

ただでさえ時間がない中、夏休み明けはテスト初日と地区大会の締め切り日が重なり、勉強と制作の両立が大変でした。夏休み中は日中に勉強、夜から朝方まで作業に没頭する日々を続けました。

周囲の評価より「やりたいこと」を大切にして

―よい作品を作るためのコツを教えてください。

賞を取ることを意識しすぎて、ものづくりを嫌いになりかけた時期がありました。人からの評価ではなく、自分がやりたいことを追求することが、結果的に上達につながると思います。

そしてとにかくいろいろなものを見て調べて、アイデアの引き出しを増やすことが本当に大事だと思います。