久保木千遙さん(千葉・千城台高校3年)の絵画作品「ポリーフィア」を紹介します。ゴミ袋をまとって眠る女性を描いたこの作品は、全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)の美術・工芸部門に出展されました。こだわりや制作中のエピソードを聞きました。(文・写真 椎木里咲)
「オフィーリア」をオマージュ
―作品のテーマを教えてください。
ミレーの「オフィーリア」の構図をオマージュしました。オフィーリアはシェイクスピアの「ハムレット」に登場する、主人公・ハムレットの恋人です。ハムレットの勘違いで父親を殺され、最後は失意のまま川で溺れて亡くなってしまう「悲劇のヒロイン」です。以前からこの絵をオマージュしたく、ゴミ袋の中に女性が横たわる構図で描きました。

色とりどりのゴミ袋が「面白い」
―ゴミ袋をあしらっているのが斬新ですね。
各市町村のゴミ袋を調べたことがあり、とても色とりどりで面白くて、描きたいと考えていました。その際、たまたま見ていたXで「能登半島地震の被災地に送られている千羽鶴は、現地の人には迷惑なんじゃないか?」という議論が巻き起こっていました。
「善意で送っているのに、現地では行き場がない」「良かれと思ってやっているのに、周囲からは真逆の感情で受け取られてしまう」という状況を突き詰めていったら、花が咲き乱れる中で死んでいるオフィーリアの姿と重なったんです。「草木の部分を、色とりどりのゴミ袋にしたら面白いかも」と思って、組み合わせました。
参考画像をピクセル単位まで拡大
―こだわったり、工夫したりしたポイントは?
ゴミ袋の描き込みです。ゴミ袋の画像をピクセル単位まで拡大して観察しました。例えば緑のゴミ袋を拡大すると、赤や紫が混じっていることがあるので、私も重ねて深みを出しました。「カクカク」した感じや光に透けている様子もリアルになるようこだわりました。
―苦労したり、大変だったりしたポイントはどこですか?
白いゴミ袋です。白は周りの色の影響を受けやすくて、バランスがとりにくいんです。最初の方に描いていたのですが、うまく色が乗ってくれなくて……一度つぶして描き直しました。
「いい絵に仕上げよう」とは思わずに
―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?
締め切り1週間前なのに全然作品が完成していなくて、朝早くに学校に行って描いていました。そのとき顧問の先生が「いい絵に仕上げよう、他の人よりよく描こうと思うといい絵は描けない。ひたすらその絵のことだけ考えていれば、絶対に良くなるよ」と励ましてくれたのが印象に残っています。
色を細部まで観察して
―上達のコツを教えてください。
色を見ることです。「ここは緑だから緑に描こう」と思うのではなく、その色が本当に緑なのか観察してみてください。もしかしたら青が入っているかもしれません。色を細部まで観察して絵に重ねると、よい絵になると思います。