高校生が通学に使うことも多い自転車。事故を起こしたり巻き込まれたりするニュースを聞くことも少なくない。県立前橋高校(群馬)の3年生5人は、高校生の自転車事故発生数について群馬県が9年間全国ワースト1位だと知り、AIによる自動ブレーキを搭載した「スマート自転車」の開発を進めている。代表して、猪熊蓮音(いのくま・れおん)さんに聞いた。
群馬の高校生の自転車事故「9年連続最多」と知り
―研究内容を教えてください。
スマート自転車「トマールくん」の開発です。地元・群馬のプログラミングコンテストにエントリーする際に社会課題を探り、自分が中学生のときに経験した自転車事故を思い出したきっかけです。
実態を調べると、群馬の高校生の自転車事故発生数は9年連続全国最多で、全国の対自動車事故のうち出合い頭で発生するものが55%を占めていると分かりました。この結果を踏まえ、AIによる自転車の自動ブレーキシステムの開発を進めています。システムに関しては車の自動ブレーキ機能に着想を得て、自転車にも導入してみてはどうかと考えました。
試作機を4回作成、県警から高評価
―どのように研究を進めましたか?
高校1年生のころから今にかけて、部活と探究活動を通してトマールくんの開発を行ってきました。マイクロコンピューターとカメラからなる判定部と、サーボモーターからなる制動部によって構成。これまでに試作機を4回(Ver.1~Ver.4)作りました。
Ver.1では一時停止標識に対する検知・制動を行いました。人間と同等の判定が可能になったため、より効果的なシステムを目指し、車の判定に移りました。Ver.2では、車の判定は確認できましたが、法的な要件を満たしませんでした。「連続稼働時間が短い」という課題もあがり、判定部・制動部の機能分離を図りました。
Ver.3では判定部をWeb上に移すことで稼働時間を確保。続いて現在のVer.4では、石坂電器株式会社と新たな制動装置を連携開発し、法的要件を達成しました。群馬県警の方々と意見交換した際には「意義のある研究で継続を期待したい」という高い評価を得ました。
「人間と同じ判定」ができるAIを求め
―研究を進める上で大変だったことはありますか?
1秒以下で検知可能なAIを見つけることが大変でした。人間と同等の判定が、まず達成すべき重大な課題でした。現在のAIに至るまで3つのAIを試してきました。
―研究する中で感じた面白さ、楽しさを教えてください。
プログラミングを用いてアイデアを形にすること、それを仲間とともに実現することが面白かったです。研究を通して企業の方や大学の先生など大人と関わる機会が多くなり、個人的に視野が広がる貴重な経験になりました。
―今後の研究の展望はありますか?
群馬県警の方に「一時停止標識にも対応できるようになることを期待する」と言われたので、一時停止標識の学習が最も優先的な課題と考えています。通常時は標識の検知、緊急時は車の検知というように、より条件を絞ったシステムにしていきたいです。