生まれつき両目がほとんど見えない古田桃香さん(岐阜・岐阜北高校3年)。「周囲にどう映っているか」と不安を抱えながらも、勇気を出して普通高校に進学。待っていたのは、想像以上に充実した高校生活だった。進学先で得た高校生活の経験から、「障害者の可能性を伝えたい」と奮闘する。(文・写真 椎木里咲)

生まれつき弱視、高校から普通校へ

古田さんは生まれつき弱視で、左目はほとんど見えず、右目は矯正しても視力が0.1以下だ。中学校までは盲学校に通ったが、「盲学校ではできない学びをしたい」と、高校は普通校へ進学を決めた。

古田桃香さん

しかし、進学前には不安もあった。盲学校では、普通校で障害への理解を得られなかったり、いじめを受けたりして転校してきた生徒を何人も見てきた。古田さん自身も、所属していた合唱団で同年代の健常者とうまく関われなかった経験があった。「周囲に自分がどう映っているか不安で、自ら壁を作っていた」という。

「障害のこと気にしてない、親友だから」

「高校では同じことを繰り返したくない」。そう考え、自ら周囲の生徒に積極的に関わった。自分がどんな障害を抱えているのか説明し、困ったときは相談した。助けてもらったら、必ず感謝することを心掛けた。すると周囲の生徒も、古田さんのことを積極的に気にかけるようになった。

清流の国ぎふ総文2024・弁論部門の壇上に立つ古田さん

ともに勉強したり、お弁当を食べたり、「見え方の違い」があっても一緒に高校生活を送れることが幸せだった。バレーボールのサーブのみ参加した球技大会では、サーブが決まるたびにクラスメートが喜んでくれた。クラスメートの「良い意味で障害のこと気にしてない。親友だから」という言葉がうれしかった。

「生まれてきてよかった」

放送部に入部し、2年生のとき放送部の全国大会、NHK杯全国高校放送コンテストの朗読部門に出場、優勝。そして今年、春の選抜高校野球大会で開会式の司会を務めた。甲子園球場に自分の声が響き、大会歌が流れると、熱い思いがこみ上げた。「生まれてきてよかった」と思った。

日本一である文部科学大臣賞を受賞した

高校では「勇気を出して変わろう」と思った。そうして行動したら、たくさんの友達が支えてくれ、想像以上に充実した高校生活を送れた。「障害を抱えながら『甲子園の司会』という大役を務めた私の姿を通して、障害者が秘めている無限大の可能性を多くの人に伝えたい」という思いから、今夏全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)の弁論部門に出場。壇上で思いを訴え、最優秀賞の文部科学大臣賞を受賞した。

「将来は、障害やハンディを抱えながら奮闘する人の力になれる仕事をしたい。高校で培った『声』の力が生かせたら幸せです」