その場の空気を読み、相手に合わせてふるまってしまう…そんな中高生も多いと思います。臨床心理士でスクールカウンセラーの大倉智徳さんに、読者の高校生からLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に寄せられた「気を遣いすぎて疲れてしまう」という悩みに答えてもらいました。

【お悩み】相手に気を遣いすぎて疲れる

誰にでも気を遣いすぎて疲れることが一番の悩みです。

相手の空気をすぐに読み、その空気に合わせた態度をとってしまいます。人がイライラしている様子や落ち込んでいる様子、相手の考えていることに「よく気づいたね」と言われるほど、ほんとによく気づきます。相手に合わせて話したり、声をかけたりすることが多いです。

相手に気を遣いすぎて疲れてしまう(写真はイメージ)

友達と話すときも「こんなこと聞いていいのだろうか」「何を話したらいいんだろう」と考えているうちに、当たり障りのない会話をするか、聞き役にまわることが多くなっていきます。自分の話をしたり、人に相談事を聞いてもらったりするなど、自分の弱みを見せることができなくなりました。

人と話すのは好きだけど、家に帰り一人になると心の疲労をどっと感じます。友達や家族、彼氏、クラスメートなどたくさんの人から「そんなに気を遣わなくてもいいよ」と言われますが、どうすればいいかわかりません。(梅ちゃん・高校2年女子)

【1】「心の声」に耳を傾けて

他人の気持ちを尊重するのはすばらしいことですが、誰にでも気を遣い過ぎてしまうと、人といる時間は常に息が抜けないことになりますし、自分の時間や気力を消耗してしまうことにもなります。また困った時に気軽に相談ができないと、苦しい時間が長引いてしまう可能性もありますね。どうしていけるとよいのでしょうか。

「言いたいこと」や「やりたいこと」を意識しよう

まずは自分が何を言いたいのか、どう行動したいのか、日頃から意識しておくことから始めてみましょう。中高生から相談を受けると、人に気を遣い過ぎるあまり、自分がどういう人間なのか、何がしたいのか分からなくなってしまう、という悩みを耳にすることが多いです。自分の心の声に耳を傾けることを、常にしておけるといいように思います。

【2】自分だけのための時間を持つ

そして、日々少しだけでいいので、自分だけのための時間を持つことも心掛けてください。推し活をする、自分磨きをする、ただボーっとするなど、気を遣い過ぎることで凝り固まった心をほぐす時間も大切です。

【3】気にしていることは何か振り返る

ところで、なぜ過度に気を遣ってしまうことが起きるのでしょう。いくつか要因があると思うのですが、やはりここにも自分の心の声が関わっているように思います。

例えば、小さい頃に身近な人から人に気を遣うことを強く教えられたり、「自分がしっかりしなければ」と思うような体験をしたりすると、大人になってもその考え方が残っていることがあります。自分に自信が持ちづらいことが、人からの評価を過度に気にさせてしまい、結果として相手に気を遣ってしまうこともあります。

幼少期の出来事が原因の可能性も(写真はイメージ)

どういった場合であっても、目の前の人がどうこうではなく、自分の心の声がそうさせている可能性があります。「自分は何を気にしているのだろう」と、振り返っておくことも大切な心の整理の仕方です。

【4】少しずつ行動を変化させよう

もし、自分の行動を変えようと思った時はどうしましょう? 私は、すぐに大きな変化を考えるのではなく、小さな変化から始めることをおすすめします。例えば、ちょっとしたことでもいいので、1日一つは思っていることを相手に伝える、などです。少しずつ自分の行動を変化させる、「今日はこれが言えた」という体験を持つことが、自信につながると思います。

お互いの関係を大切にするためには、自分を大切にすることも欠かせません。少しずつでいいので、自分の時間やエネルギーを確保する方法を見つけるとともに、「言いたかったことが言えた」と思う体験を積み重ねてもらえればと思います。

大倉智徳さん

おおくら・とものり 2002年からさまざまな公立高校でスクールカウンセラーを務める。現在は、小中学校などにも勤務

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