嫌われ者の虫・ゴキブリ。極力姿を見ず、触らず、近づかずに捕獲する道具を、ゴキブリが苦手な岐阜聖徳学園高校(岐阜)の3年生4人が開発した。代表して、河村友果さん(3年)に話を聞いた。(写真・学校提供)

一人でゴキブリ退治できる捕獲機を開発

―どんな捕獲器を開発したのか教えてください。

なるべく目視せず、接触せず、遠距離からゴキブリを捕獲する道具です。柄(え)がついた箱型の捕獲器をゴキブリにかぶせ、横についた取っ手を押して狭い空間に閉じ込めます。柄は2メートルあるので、ゴキブリから離れた距離から捕獲できます。取っ手を押すと、箱の下の板がスライドされてゴキブリを閉じ込める仕組みになっているので、閉じ込めてから逃がしたり、殺虫したりできます。

開発したゴキブリ捕獲器

―開発のきっかけを教えてください。

先生の家にゴキブリが出て大変な思いをしたという話をヒントに、虫が苦手な人でも捕獲できる道具を作ろうと思ったことがきっかけです。私もゴキブリが苦手で、家で出たときは逃げ回り、一人で対処できません。私や同じ思いをしている人が、 一人で捕獲できるようにしたいと思って始めました。

箱の横の取っ手を押し、ゴキブリを狭い空間に閉じ込める

コンセプトは「見えない、触れない、離れる」

―捕獲器のアイデアはどうやって思いつきましたか?

商品化を視野に入れていたので、既存品とかぶらないものを作りたいと考えていました。そのうえで、ゴキブリが苦手な人のために「見えない、触れない、2メートル以上離れる」という条件を踏まえて考えて、原型ができあがりました。

さらにそこから「片手で捕獲できる」など、より良い捕獲器になるように、試作品の案を出し合い、素材も考慮して作りました。

開発した4人

―捕獲器はどのように改良を重ねたのでしょうか。

試作品の案を出しては、欠点を発見する。また案を出す、欠点が見つかる……という過程を4回ほど繰り返して、今の捕獲器になりました。実験を数百回繰り返すうちに、捕獲器はボロボロになってきたので、素材を一部木材に変更するなど、さらに改良しました。

実験のため校内でゴキブリを募集

―開発中に大変だったこと、それを乗り越えた方法を教えてください。

苦手なゴキブリと常に向き合わなければならなかったことがつらかったです。でも、メンバーにゴキブリが平気な人がいたので、実験の時はとても助けられました。

捕獲実験をするために学校に「ゴキブリ募集ポスター」を貼ったところ、先生や生徒がゴキブリを持ってきてくれたのですが、実験当日には弱ったり死んでしまったりしていました。そこで爬虫(はちゅう)類のえさとして売られている虫「レッドローチ」で代用して、捕獲実験を行いました。

校内に貼ったゴキブリ募集ポスター

実験場所がないことも大変でした。教室でレッドローチを1匹ずつ放して捕獲実験を行ったのですが、クラスメートが協力的だったので感謝しています。メンバーの時間が合わず、スケジュール調整で追い込まれ、投げ出したくなることもありましたが、先生やクラスメートが一緒に悩んでくれたことで乗り越えられました。

ゴキブリ苦手な同級生も協力

―開発中の印象的なエピソードはありますか?

あまり協力的でなかったメンバーの男子3人が、実験を始めてから協力的で積極的になりました。クラスメートもゴキブリが苦手なのに、実験に進んで協力してくれたことがとてもうれしかったです。最初は「遊んでいるのではないか」という目を向けていた先生方も、実験を進める姿を見て真剣に取り組んでいることを理解してくれました。

―開発を通して力がついたと感じることはありますか?

企業への電話のかけ方や、書類の書き方など、探究をしていなければ知らなかった社会常識を知ることができました。まだまだ勉強していかなければなりませんが、この活動は今後の自分の自信につながるものになったと思います。