受験勉強は高校生にとって大きなストレスだ。心のバランスを崩せばうつになってしまうことも。LINE公式アカウント「高校生新聞編集部」をフォローしている高校生読者から、自分が「受験うつ」か知りたいと悩みが寄せられた。医師として受験生のメンタルケアに取り組む吉田たかよし先生に、兆候を聞いた。(安永美穂)

「受験うつ」、兆候は?

さまざまなストレスを受け続けることで、脳の機能に不調をきたすと「うつ病」を発症することがあり、なかでも受験期に特有のうつ症状は「受験うつ」と呼ばれています。「受験うつ」の兆候としては、主に次のようなことが挙げられます。

【1】勉強への意欲がなくなり、スマホやゲームがやめられない
 
普通の心理状態であれば、どんなに怠けがちな人であっても入試直前期は勉強に取り組もうとするものです。しかし、「受験うつ」になると、勉強をはじめとするさまざまなことへのやる気や興味、関心が失われてしまいます。

すると、能動的な作業を必要とせずに受け身の姿勢で楽しめるスマホやゲームといった娯楽にのめり込むケースが少なくありません。

【2】聴覚が過敏になり、かすかな生活音が気になる
 
時計の秒針の音や家族の足音といったかすかな音にも過敏に反応するようになるのは、心理的に不安定になっているサインです。

入試前日に緊張感が高まって、さまざまな音が気になるというのは多くの人にみられる傾向ですが、入試までまだ日にちがある状況で聴覚過敏が続く場合は「受験うつ」の可能性があります。

音が気になって仕方ないこと、ない?

【3】親に対して「うるさい!」「ほっといて!」が口癖になる
 
「受験うつ」になると、脳の中で主にネガティブな感情に関連して情動や感情を処理する「扁桃体」が過剰に働くようになります。すると、寛容さが失われて、普段なら受け流せる親の発言などがいちいち気になり始めるケースがしばしば見られます。

「うるさい!」「ほっといて!」などと親に過剰に反発することが増えたり、怒りっぽくなったりすることは、心の不安定さの表れだといえます。

【4】ケアレスミスが急に増える
 
脳機能が不調をきたすと、思考力や記憶力、判断力が著しく低下します。脳には情報をごく短い間、記憶に留めながら情報を処理するワーキングメモリという働きがあり、主に前頭前野という部分がそれを担っています。

ケアレスミスが急に増えたら注意

私たちが試験問題を解くときに、「マイナスにマイナスを掛けるから、ここはプラスになる」「『~ではないものを選べ』という質問だから、それに該当しないものを選ぼう」といったことを考えながら情報を処理できるのは、記憶を一時的にワーキングメモリに保持できているからです。「受験うつ」になるとワーキングメモリに保持された記憶がすぐに消えてしまうようになるため、ケアレスミスが増えやすくなります。

体調の変化にも注意

これらのほか、
・早朝に目が覚める、朝起きられなくなる
・肩・背中・腰など身体のあちこちが痛くなる
・学校や塾に行こうとすると、頭痛、腹痛、息苦しさ、吐き気などの症状が出る

といったことも、「受験うつ」の兆候だといえます。

心療内科の受診も検討して

「受験うつ」の兆候に気づいた場合は、心療内科を受診して医師によるサポートを受けることを検討してみるとよいでしょう。「受験うつ」の場合は、一般的なうつ病とは異なる治療が必要になることもあるため、できれば「受験うつ」の治療の実績がある医療機関を受診すると安心です。

 

吉田たかよし先生
 よしだ・たかよし 医学博士・心療内科医師。「本郷赤門前クリニック」院長として、脳科学と学習医学を活用して受験生の心身をサポート。「受験うつ」「受験燃え尽き症候群」などの治療に取り組んでいる。「本郷赤門前クリニック(吉田たかよし院長)」HP
http://www.akamon-clinic.com/

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