大館鳳鳴高校(秋田)のボアゼイヴィア龍穏(りゅうおん)さんと鷹觜琥太郎(たかのはし・こたろう)さん(ともに3年)は、スマホと連動させて猫背の改善を促す猫背矯正ベルトを開発した。一体どんな装置なのか、代表してボアさんに聞いた。(写真・学校提供)
センサーが「猫背度」を計測
―開発した猫背矯正ベルト「dogBone」はどうやって猫背を改善するのでしょうか。
ベルトには圧力を測るセンサーが5つ内蔵されていて、そのセンサーが「どのくらい猫背になっているか」を感知します。その情報をスマホアプリに送信し、0~100の数値で猫背の度合いを表す仕組みです。良い姿勢ならば数値が低く、猫背ならば数値が高く表示されます。
さらに、姿勢の状態に応じて通知が届きます。姿勢が良い時は「Very good posture(とても良い姿勢です)」と届きますが、猫背になっているときは姿勢の状態を表したイラストとともに、「Research shows you are hunchback(あなたは猫背です)」「Working for long periods of time aggravates blood flow(長時間の作業は血流を悪化させます)」などと、ユーザーそれぞれの状態に合ったアドバイスが送られます。そのアドバイスをもとに、ユーザーに猫背の改善を意識させます。
ストレスなく姿勢改善したい
―開発のきっかけや、理由を教えてください。
猫背は、頭痛や肩こりを引き起こすなど、健康に悪い影響があります。猫背の改善をうたう既存製品の大半は、常に「矯正された状態」を維持するような形です。それは着けている人に大きなストレスなんじゃないかと考えていました。
そこで、「MEMS加速度センサー」という小型のセンサーと圧力を測るセンサーを用いて、「どのくらい猫背になっているか」の数値を計測し、そのデータをもとに短時間で矯正を促すこのベルトを開発しました。「矯正された状態」を維持する装置ではないため、ストレスも少なく猫背の改善が期待できます。
小型化に注力
―いつから開発を始めましたか?
2021年冬に設計を始め、実際に製作に入ってからはほぼ毎日作業をしていました。第1モデルを22年4月に行われた「第13回国際イノベーションコンテスト」の国内予選で発表しました。国内予選のときにもらった意見をもとにセンサーでの計測の特化とアプリ連携に力を入れ、第2モデルの開発を開始。世界大会へ出場し、2位になりました。
―どんなところが難しかったですか?
ユーザーに「使いやすい」と感じてもらうため、小型化を追求しました。特に基盤の縮小にはなかなか苦労しました。アプリ開発においては、データ処理を試行錯誤して効率のよいシステムを構築しました。
より良い暮らしのために
―今後の展望を教えてください。
dogBoneの猫背の改善効果について研究を進めながら、改良を重ねていきたいです。実際に着用している人のデータを活用して、解析も行うつもりです。
現代は、人々の時間を消費させるコンテンツやサービスが増えつつあります。例えば、最先端のアルゴリズムを用いてユーザーの興味を刺激するコンテンツを勧め、より多くの時間を浪費させ、広告収益を増やそうとしている企業もあります。
果たしてこのような人間の弱さをつくような、「技術の負の利用」は正しい方向なのでしょうか。私たちは、その現状を変えたいのです。技術によって利用者によりよい暮らしができるような研究開発を進めていきたいと思っています。