卒業生の制服を糸に戻して、新入生の制服に生まれ変わらせる――。駒場学園高校(東京)では来年度から日本初の「循環型制服」を導入する。おさがりやリメイクとも異なる、循環型制服の開発のきっかけや在校生たちの反応を聞いた。(中田宗孝)

着古した制服を糸にして再利用

駒場学園高校が取り入れる「循環型制服(サーキュレーションユニフォーム)」は、高校3年間使用した卒業生の制服を、最新の技術によって新たな制服へと再生させるものだ。同校と、大阪市の毛織物メーカー・日本毛織(ニッケ)が連携して開発したもので、来年度から新入生の制服に採用される。

卒業生の制服の素材を織り込んで作られた駒場学園高校の循環型制服(写真・日本毛織提供)

「これまでの『おさがり』とは別のやり方で着古した制服を再利用できないかと、学校として考えてきました。そのアイデアをニッケさんに相談したところ、実証実験中の技術を試したいとの回答をいただけたんです」(同校副校長・戸塚哲夫先生)

循環型制服の主な制作過程は、まず古い制服を解体して原料となる綿の状態にまで戻す。そして別の繊維と混ぜ合わせて衣料用の糸にし、生地化する。この生地から新しい制服が作られていく。学生服のようなウール混の衣類のリサイクルは、これまで車のシートなどの産業資材が大半だった。今回ニッケが開発した新技術により、衣類用の糸への再生を可能にした。

着古した制服の再活用できる表地と裏地の部分を写真のように綿の状態に戻す。この綿から循環型制服に使う糸が作られていく(写真・日本毛織提供)

新品との違いは「わかりません!」

同校の希望者を対象とした「放課後探究プログラム」の一つ、「制服向上委員会」は、制服の歴史やアパレル業界の課題などを学び、文化祭では生徒がデザインした制服のお披露目会を行っている。循環型制服の構想を知った委員会の生徒たちは、循環型制服の経緯や魅力を学校内外に伝える活動を行ってきた。

「寄贈式」を5月に開催。卒業生が自らの制服をハサミで裁断する儀式も行われた(写真・学校提供)

昨年度のメンバーが、試作段階の循環型制服の手触りを確かめたときの印象を振り返る。「従来の制服と循環型制服は生地の混合率がそれぞれ違いますが、2つを触ってみても違いはまったく分かりませんでした。もちろん古さを感じないですし、品質的にも問題ありません!」(渡邊杏さん・2年)

寄贈式で先輩に感謝伝え

昨年度の卒業生に制服の提供を呼び掛けたところ、約100着の制服が集まった。寄贈された制服は、来年度から循環型制服の一部となる。

制服を快く提供した先輩たちへ感謝を伝えたい。その思いを胸に5月、制服を寄贈してくれた卒業生を招待して「寄贈式」を実施。中島みゆきの歌う「糸」をBGMに、出席した卒業生が自らの制服にハサミを入れる式などが行われた。

「新しい糸と古い糸を紡いで作られていく循環型制服。卒業する先輩と入学してくる新入生、それぞれの思いも重なり合っていくような。『糸』の歌詞がぴったりだと思いました」(望月更さん・2年)

左から昨年度の制服向上委員会のメンバーの渡邊さん、鈴木さん、望月さん(写真・中田宗孝)

アパレル業界の課題解決へ一石

制服向上委員会では、アパレル業界の大量生産がもたらすマイナスの影響を学んできた。「例えば、私たち高校生にも身近なファストファッション。低価格で買えるためか、安易な気持ちで捨ててしまうことも。ゴミの量はどんどん増えていきます」(渡邊さん)。「たくさんの服が作られ、購入者が大量に消費していく。そこで排出される二酸化炭素の量も見過ごせません」(鈴木杏さん・3年)。

高校生が着なくなった制服を捨てずに企業へ提供し、次の世代へと循環させていく。アパレル業界の課題の一つでもある環境負荷に循環型制服プロジェクトが一石を投じていくのかもしれない。「循環型制服は環境面にも優しい。この取り組みが、多くの学校で広がってほしいです」(望月さん)