歴史の教科書で、誰もが見たことがある古墳。飯田怜大(れお)さん(高校1年)は、これまでに2000基以上の古墳を訪れた「古墳マニア」だ。「将来の夢は古墳に埋葬されること」というほど夢中になる飯田さんに、たっぷりと古墳愛を語ってもらった。(文・黒澤真紀、写真・本人提供)

当時の姿に思い馳せ

古墳に着いたらまず看板を見て、いつの時代の古墳か、誰を埋葬しているのかなどを確認するのが飯田さんのルーティーンだ。立ち入りが許可されていれば、古墳に登って景色を眺め、石を積んで作られた埋葬施設の「石室」の中を見学する。

大阪府高槻市の今城塚古墳にて。「古墳に登ると、その巨大さや前方後円の形を実感できる」

「どういう風に築かれたのだろうと、当時の姿を想像します。今は緑が茂っているけど、完成した時は木も生えてなくて、古墳があっただけなんだろうなあと思うと、時の流れを感じるんです」

2000基めぐり見つけた推し古墳

小学校4年生のころから古墳巡りを始め、北は宮城県から南は鹿児島県まで、これまでに訪れた古墳は2000基以上。最初はグーグルマップで行きたい古墳を調べて行っていたが、今は発掘調査が行われている古墳などを中心に足を運ぶ。

宮城県多賀城市の大代横穴墓群は、山の斜面に掘り込まれた横穴状の墓室が特徴的

中でも一番好きなのは大阪府の今城塚古墳だ。2023年8月時点で被葬者を特定する「治定」を宮内庁から受けていないが、継体天皇(450?~531年)の墓である説が有力とされている。天皇陵は宮内庁が管轄しているので研究者でもほぼ立ち入れないだけに、見学できるのは貴重だ。「継体天皇のお墓ではないかという仮説が、埴輪や阿蘇ピンク石でできた石棺が発見されるたびに解明されていくようで、ワクワクするんです」

「古墳旅行」がきっかけでマニアに

本や漫画の影響で歴史好きな子どもだった。友だちと公園で石器を作ったり、穴を掘って家を作ったりして遊び、「縄文時代や古墳時代っておもしろいな」と興味が湧いた。

古墳に関するグッズを集めるのが大好きな飯田さん。「特に埴輪がかわいくて。お気に入りがどんどん増えていって困ります(笑)」

両親は歴史好きの息子のため、飯田さんが小学校4年生の時、歴史的建造物や遺跡を巡る旅行を計画。最初の訪問地、奈良県の箸墓古墳を見た瞬間に、飯田さんは古墳に心を奪われた。

「それまでマンガや本で古墳というものは知っていたけど、実際に見たら大きくてびっくりして」。周りの景色や厳かな雰囲気を感じながら古墳の周りを歩くうちに、「ほかの古墳はどうなっているんだろう。中も見てみたい」という思いが込み上げてきた。両親に懇願し、急きょ旅程を変更。黒塚古墳、高松塚古墳などを回った「古墳旅行」が、古墳にのめりこむきっかけになった。

「理想の古墳に埋葬されたい」

古墳の魅力は「何といっても種類の豊富さ」だと語る。「前方後円墳、方墳などいろいろな種類があるし、横穴式、竪穴式などさまざまな形状の石室がある。他にも、かわいい埴輪や葺石(ふきいし)が並ぶなど、現代のお墓よりもバラエティーに富んでいるところがおもしろい」

夢は、自分の理想の古墳に埋葬されること。「上円下方墳で、まわりには大好きな水鳥型埴輪やいろんな埴輪を中心に並べたい。石室の石棺は阿蘇ピンク石で!」と目を輝かせた。