身近な魚の一つ、メダカ。実はブリーダーによる品種改良が盛んな観賞魚として、コイや金魚に次ぐ人気を誇る。山口奏汰さん(静岡・日本大学三島高校2年)は、26種・2万匹以上のメダカを飼育。品種改良やブリーダー活動、「メダカ屋」の運営に情熱を注いでいる。(文・中田宗孝、写真・本人提供)
2万匹のメダカを育てる
中学のころからメダカの魅力に夢中の山口さん。飼育場所の自宅駐車場の空きスペースには、50ケースにも及ぶ水槽代わりのプラスチック容器がずらりと並ぶ。さまざまな品種の改良メダカを育て、増やしている。「今は26種・約2万匹の改良メダカを飼ってます」
改良メダカとは、目立つ体の色や身体に特徴があるメダカを人工的に選別、交配し、生まれたメダカのこと。熱帯魚さながらの色鮮やかさで個性的な見た目をした改良メダカは、観賞魚として人気だ。
7月からは自宅の軒先で「メダカ屋さん」に挑戦。根気よく育ててきた「ブロンズ紅白」「ブラックダイヤ」(ともに改良メダカの品種)の成魚を1000円から販売している。
新しい品種作り目指して
目指しているのは、柄や色味がしっかり出た新しい品種を作ることだ。
「自分が思い描いた特徴のメダカが表現できるかは、実際に何世代にもわたり繁殖をくりかえさないと分からないところがある。それがワクワクするんです!」。仮に新品種と認められれば、そのメダカブリーダーがファーストネーム(ニックネーム)を命名できるというロマンに思いをはせ、試行錯誤を重ねている。
毎回話しかけ餌やり
幼いころから金魚や熱帯魚の飼育経験があった山口さんは、中1のときに親戚からもらった数匹の黒メダカを育て始める中で改良メダカの存在を知り、どっぷりつかっていった。「色や柄のバリエーションの豊富さにすごくひかれたんです」
中3になるとメダカの数は約1万匹にまで増えていた。お気に入りの品種は三色メダカ。「人懐っこさがかわいい。僕がそばに寄ると三色メダカたちが近づいてきてくれるんです。毎回話し掛けながら餌やりをしてます(笑)」
「自分らしさ」見つけた
大好きなメダカを追求するうちに「自分らしさ」も見つけた。「実は高校入学してしばらく『自分っていうのがあまりないな』なんて思い悩んでいたんです。まわりの同級生はしっかり自分を持っている人たちが多くて」と明かす。
そんな時、メダカに関する活動が自己表現の強い味方になると気がついた。「大人のメダカ愛好家に飼育の助言をもらいにいく積極性が自分にはあると気付きました。多くの人にメダカの魅力を伝えたいという目標も生まれました」
メダカの飼育に没頭する山口さんに家族も好意的だという。「母や妹も飼育を手伝ってくれます。両親からは『中途半端にじゃなく最後まで責任をもってやりきりなさい』と応援してもらっているんです」
観賞魚に関わる仕事に就きたい
「初めて改良メダカを見た人からは『これ熱帯魚じゃないの?』なんてよく言われるんです。そんな方々に僕が育てた改良メダカたちを見てもらいたい」。今後もメダカ販売などで魅力を広く発信しつつ、通う高校の文化祭でメダカの展示ブースを設けるべく計画を練っているという。
将来は、水槽レイアウトのプロデュースはじめ、観賞魚に携わる仕事に就きたいと考える。「今は独学で水槽のレイアウト術を学んでいるんです。自宅の水槽で石や流木の配置を工夫しながらオリジナルの空間を作ってます」。高校卒業後は熱帯魚の専門学校への進学を志望している。