テレビ番組で見かけることもある「うそ発見器」。人が嘘をついているかどうか、どうやって判断しているのだろう。井上莉緒さん、本橋佳世子さん(ともに東京・お茶の水女子大学附属高校3年)は「うそ」について1年間研究し、3月に開催された「関東近県SSH指定校合同研究発表会」で発表を行った。代表して井上さんにどう研究を進めたか聞いた。

嘘には4種類のタイプがある

―研究内容や研究を始めたきっかけを教えてください。

私たちは「嘘を見抜く」をテーマに1年間研究を行ってきました。きっかけは、人は生きていく中で少なからず「うそ」と関わるため、人がついたうそを簡単に見抜くことができたら実生活でもそれを役立てることができるのではないかと考えたからです。

研究を進めた井上莉緒さん(左)と本橋佳世子さん(写真・椎木里咲)

―研究はどのように進めていきましたか?

文献調査とうそ発見器を用いた実験によって研究を進めてきました。

文献調査では、うそには「誇張表現」「巧妙な嘘」「自分が疑われないための嘘」「他人を傷つけないための嘘」といった4種類のタイプがあることが分かりました。他にも実際に科学的鑑定法として使われている「ポリグラフ装置(うそ発見器)」の仕組み、そしてうそをついている時の特徴などについて調べました。

そこから、発汗量や心拍数がうそと密接につながっていることが分かり、実際に専門機関にあるポリグラフ装置を用いて、「うそをついているか否かで人の生理反応にはどれくらいの差異が生まれるか」を実験しようとしました。

しかし、専門機関に連絡を取ったところ、機密情報であるため装置を使うことがかなわず……。行き詰まったことが研究において最大の壁となりました。

汗の量と嘘の関係性に注目

―立ちはだかった壁はどのようにして乗り越えましたか?

「うそについて研究を続けたい、実験をしたい」という強い気持ちがあり、通販サイトで購入可能な「うそ発見器」を使って実験をすることにしました。

―実験内容を教えてください。

実験では、被験者が部屋の指定された場所のどこかにカプセルを隠します。隠してから3分後に検査者が入室し、被験者にカプセルの隠し場所をたずねます。被験者は検査者からの質問すべてに「いいえ」と答えるのですが、この時にうそ発見器を使います。

私たちは「うそ発見器が手のひらの発汗量の増加によりうそを判定している」と仮説を立てて、「付着した汗を除去するために実験ごとにうそ発見器を拭くか、そのまま使用するか」という実験と、「音楽を聴き感情に変化が出た際、結果にどれほどの揺らぎが生じるか、音楽を聴いた時と聴いていない時の違い」という2点でそれぞれ比較実験を行いました。

関東近県SSH指定校合同発表会で使用したポスター(写真・椎木里咲)

―どう予測を立てていましたか?

1つ目の実験では、「私たちのうそ発見器に関する仮説が正しければ、うそ発見器を拭くことでより正確な結果を得ることができるのではないか」と考えました。

2つ目の実験では、「人は音楽を聴くと自律神経に作用し、交感神経が働いてテンションが上がったり、逆に副交感神経が働きリラックスできたりするといわれていることから、発汗量にも変化があるのではないか」と予測しました。

また「BPM(音楽のテンポ)の違いによっても発汗量に変化は出るのだろうか」と考え、BPM196の曲とBPM88の曲を用いて比較しました。

さらに実験の後半からは1つ目、2つ目の実験をしながら心拍数も測るようにしました。これは「うそをつくことと心拍数が密接につながっている」と文献調査から得ていたからです。

仮説が正しいと判断できた

―実験の結果を教えてください。

1つ目の実験では、「拭いたときの方が正確な結果が出た」ことから、やはり私たちのうそ発見器に対する仮説は正しいと判断しました。

2つ目の実験ではBPMに関わらず、曲を聴いた際はうそ発見器がうそを見抜くことができなかったり、逆に真実をうそと判定したりしたことが多かったです。特にBPMが高い曲を聴いた時の方が、誤判定が出やすかったため、音楽と発汗量のつながりが示唆されました。

ウソ発見器を使って実験を進めた(本人提供)

2つの実験をしながら測った心拍数は、うそをついた後、約86%の確率でつく前や平常時と比べて高かったことから、うそと心拍数が密接につながっているということが分かりました。これは文献結果の調査どおりでした。

「科学的に見る力」が付いた

―研究を通して身に付いた力はありますか?

データを第三者にも分かりやすく表にまとめること、科学的な見方を養ったことです。直接目で見て判別することのできない、直接目で見て判別することのできない、複雑な生理反応からなる「うそをつく」という行動について、汗の量の変化や、心拍数などの観点から科学的・客観的に結論を導き出すことができたのも成果のうちの一つだと思います。今回得たことを、今後の学びや実生活などさまざまな場で生かしていきたいです。