室町時代以降、忍者が盗聴に使っていたとされる道具「些音聞金(さおとききがね)」。柴崎湧人(ゆうと)さん、鶴丸倫琉(みちる)さん(ともに山口·徳山高校3年)は、どのような効果があるか分からなかった些音聞金の仕組みを解明した。5月、科学研究の世界大会「ISEF2023」に出場し、発表した。どのように研究を進めたのか、代表して柴崎さんに聞いた。(写真·学校提供)

忍者道具の謎にひかれて

―研究のきっかけは?

1つ上の先輩が忍者に関する古文書『忍秘伝』を解説した本を読んで、解明されていない忍者の道具がいくつかあることを知ったのがきっかけです。先輩が始めた研究を、私たちが受け継ぎました。

柴崎さん(左)と鶴丸さん

「些音聞金(さおとききがね)」は『忍秘伝』によると、室町時代以降で忍者の日常的な業務である聴音(盗聴)に使用していたそうです。真鍮(しんちゅう)製で少し厚みのあるカードサイズ。忍者にとって「第一の道具」と称されるほど、重宝していたそうです。

雑音を小さくする効果を発見

―研究の進め方や、研究の結果わかったことを教えてください。

「些音聞金」を糸でつるして耳に当て、聴音に使っていたことは知られていたのですが、どのような効果があるのかは全く不明でした。私たちはレプリカを作成してさまざまな科学実験をし、「些音聞金」は「回折と干渉」という物理現象を発生させて、高音領域の雑音を消す効果があることを明らかにしました。

忍者が使っていたとされる「些音聞金」のレプリカ。盗聴の際、雑音を小さくする効果がある

―研究を進める中で苦労したことと、それを乗り越えた方法を教えてください。

当初わたしたちは『忍秘伝』の記述から、「些音聞金」は照射した(当たった)音を増幅すると考えていました。ところが何カ月もの間、何度実験しても増幅効果は確認できませんでした。

あきらめかけていたところ、偶然、「些音聞金」の裏側で音が極端に小さくなる場所があることを発見。詳細を調べると、「些音聞金」は増幅ではなく、減衰させる道具だったことが明らかになりました。

―3Dプリンターを使って装置を開発されたそうですね。どんな装置ですか?

「些音聞金」の知見を活用して、既存のマイクに金属板を取り付けると簡単に雑音が消せると考えました。そのために、数センチ四方サイズのアタッチメントを3Dプリンターで作成しました。

「科学の光が当たっていない道具や技術」研究したい

―研究内容を今後どう生かせると思いますか?

「些音聞金」は非常に単純な金属板です。私たちは既存のマイクに取り付けるだけで、雑音を消し、よりクリアな音を取得できることを確認しました。今後は金属板の大きさを変えるなどして、より性能を向上させたいと考えています。

研究を進める柴崎さんと鶴丸さん

―研究を通して身に付いたことや、普段の生活で役に立っていることはありますか?

何らかの結果を得るには数カ月から1年単位の粘り強い努力が必要で、データを科学的に分析する能力と、次々発生する課題を乗り越えるには他者の協力が重要なことを痛感しました。何度か学校外で研究発表する機会を得ましたが、自分の考えを分かりやすく伝える方法は、普段のさまざまな場面で活用できています。

―今後研究をどのように進めていきたいですか?

私たちは忍者の道具を科学的に解明し、その効果や使用方法の詳細を明らかにしました。これは、日常生活からは発想しにくい研究テーマだと思います。しかし、いまだ科学の光が当たっていない道具や技術は他にもあるはずです。今後はこうしたテーマも選択肢に入れながら、研究を継続したいと考えています。