「アオハライド」は、個性豊かな高校生が繰り広げる、人気の青春ラブストーリーマンガ。物語をめぐって友達と語り合っている人も多い。実写映画が公開されるのを前に、作者の咲坂伊緒さんに、マンガ家になるまでの歩みや作品に込める思いを聞いた。(聞き手・高校生記者 諸角優英)

「事故チュー」は実体験

──「アオハライド」は、吉岡双葉(よしおかふたば)と馬渕洸(まぶちこう)をはじめとした高校生の恋愛や友情の物語で、多くの人の共感を呼んでいます。ストーリーは、どのように考えているのですか。
 伝えたいメッセージやせりふが浮かんだら、「それを入れるにはどんなエピソードにすればいいかな、こういうキャラクターを登場させようかな」と考えながら全体のストーリーを作り上げていくことが多いです。
 実体験をアレンジしてストーリーの中に盛り込むこともあります。例えば、文化祭で双葉と洸がアクシデント的にキスをしてしまうシーン。あの場面は、私がかつて実際に経験した「事故チュー」なんです(笑)。こんな展開はマンガでしかあり得ないと思う人もいるかもしれませんが、「いや、あるんだよ、結構!」という気持ちでニヤニヤしながら描いていました。

──洸を思う双葉の「じりじりと探り合うあと1ミリの言葉と態度……」というせりふが、とても響きました!
 恋愛で一番楽しいのは、片思いをしている時なんじゃないかなって思うんです。もちろん、恋人同士になるのもすてきなんですけど、自分の気持ちがどうしようもなく高まる片思い期間に、私は激しく心を動かされます。そんな、一生懸命に片思いをする人たちの輝きを読者に伝えたい。「恋が実るまで、あともうちょっと!」というマンガを描くのが、とっても好きなんです。

──「アオハライド」が実写映画化されます。
 これまで私のマンガを読んでくれた方以外にも作品を知ってもらえるので、うれしく思っています。全編にわたり映像が美しく、原作をとても大事にしたストーリーに仕上がっていて感激しました。本田翼さんが桜の中を走る姿を見た瞬間、心を奪われてしまったんです。「翼さん、めちゃくちゃカワイイ!」って。みなさんにも、ぜひ楽しみにしてほしいシーンです。

会社が嫌になりマンガの道に

──ご自身はどんな高校時代を過ごしましたか。
 当時、なぜか「高校生は自由で無敵」と思い込んでいました(笑)。友達といっぱい遊んで、心に残る恋愛もした。毎日を全力で満喫していました。実は、高校生のころは絵を描いていないし、ましてやマンガ家になるなど考えもしませんでした。「将来は、どこかの会社で働くのかな」って、ぼんやり思っていました。

──意外です。いつマンガ家を志したのですか。
 社会人になってからです。理由は、当時勤めていた会社の仕事がすっごくハードだったこと。家で仕事をできないかと考えた時に「マンガ家なら早起きも満員電車の通勤もしなくていいじゃないか」と。その時初めて、真剣に絵を描くようになりました。

──驚きました。絵がすてきだと友達もみんな言っています。
 幼いころから絵は時々描いていたけど、周囲が認めるような特別な才能があったわけではないんです。デビュー当時は、自分の下手な絵はコンプレックスだったけど、「マンガを描けないことはないぞ」っていうやる気はあった。自分の作品と向き合いながら、何度も何度も絵を描き続けたことが上達につながりました。

――高校時代にやって良かったことはありますか。
 友達付き合いは大事です。どういう友達と付き合ったかで、自分が形成されるのだと思います。大人になって振り返ると、友達と一緒に過ごしてきたことが、今の自分に大きく影響しています。

──高校生にメッセージをお願いします。
 やってみたいと思うことがあれば、迷わずチャレンジしてほしいですね。思っているだけで動かない青春はもったいない。大失敗をしたり、傷ついたり、恥ずかしい経験をしたりすることがあるかもしれません。そうだとしても、待っているだけでは何も始まらないので、頑張って一歩踏み出してください!応援しています。
(構成・中田宗孝)

さきさか・いお
東京都生まれ。1999年「サクラ、チル」でデビュー。「アオハライド」は2011年から「別冊マーガレット」で連載中。07年から10年まで同誌で連載した「ストロボ・エッジ」(単行本全10巻)も実写映画化され、来年3月に公開される。

キュンとするシーンが満載
 高校生になった吉岡双葉は、中学時代に思いを寄せていた馬渕洸と再会する。口では意地悪を言っても本当は優しい洸に接するうちに、再び恋心を抱くように……。相手の心が読めないもどかしさなど、キュンとするシーンが満載。距離を縮めたり、離れたりを繰り返す双葉と洸にドキドキが止まらない。恋模様だけでなく、自身の在り方に悩みながら懸命に青春を駆け抜ける高校生の姿にも勇気づけられるはず!
(諸角)
●12巻が12月12日発売。オリジナルアニメ同梱(どうこん)版も同時発売。