大阪の府立高校に通う高校3年の想空(そそら)さんは、15歳のときに「株式会社SOS」を起業。子どものおもちゃなどに広告を掲載するビジネスを展開している。「子どもたちの笑顔をつくりたい」。その真摯(しんし)な思いは多くの人の共感を呼び、1年目から約3000万円の売り上げを達成した。起業から3年目を迎えた想空さんに、これまでの歩みと今後の目標を話してもらった。(文・黒澤真紀、写真・本人提供)
「子どもの声が届いてない」もどかしさ募り
―起業したきっかけを教えてください。
私が10歳の時、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが娘さんの誕生とともに、子どものための慈善団体へ多額の寄付を行うというニュースをみて、「私もいつか子どものためになることをやりたい!」と強く思ったんです。それが再び沸き起こったのが中学3年の進路面談で、自分がやりたいことは何かを真剣に考えたときでした。「10歳から抱いていた夢をかなえるためには起業しかない」と決断しました。
―なぜ「子どものため」だったのでしょうか。
一人の中学生として、「子どもの声が大人に届いてない」ともどかしく感じることが多くありました。例えば、経済的な事情や体調の問題で十分に勉強ができない子に対して、「成績が悪い」としかる、禁止する必要がないことなのに校則で縛る、もめ事が起きても当事者全員から話を聞かずに正しいかどうかを判断する、など。高校生になった今、TikTokやメールを通じてみなさんからの相談を受けていますが、私と同じように感じている子は多いと思います。
私自身が5人きょうだいの長女なので、自然と子どもに目が向くというのもあるかも知れません。末の弟は年少で歳は離れていますが、きょうだいみんな仲良しなんですよ。
両親に「やるから!」起業の決意表明
―起業するにあたり、どなたに相談されましたか。
両親に、相談というよりも「やるから!」と決意表明をしたので(笑)、「やるなら頑張ってね」と応援してくれました。ただし、本名の「想空」は公表しても良いけど、名字は成人まで伏せることを約束。中学3年の11月に起業したので、高校は、社長業を伸び伸び続けられる校風の学校を受験しました。
―改めて、「株式会社SOS」はどのような会社ですか。
「すべてのコドモのために」をコンセプトに、「使用型配布広告」をしています。子どもが普段使う文房具やおもちゃに、取引先様のロゴ、QRコード、社名、URLなどを印字。テレビなどのメディアよりも、長い時間、子どもや保護者の目に触れるので、継続的な宣伝効果が期待できます。
子どもが使うものであればどんなアイテムでも構いません。幼稚園や保育園、児童施設など、子どもがいる場所ならどこにでも無償で送らせていただきます。
1年目で3000万売り上げ達成
―どうやって売り上げを生み出しているのでしょうか。
SNSやホームページを通じて弊社を知ってくださった方からメールをいただき、共感してくださった取引先様とやりとりが始まります。配布物100個から受け付けており、「何を、どこに、どのくらい配布するか」によって売り上げが決まります。1年目から約3000万の売上を達成したときは驚きましたが、私の思いを一生懸命伝えてきただけなので、「これをやったから」ということはありません。
取引先のみなさんが本当に良い方ばかりで、人に恵まれていると思います。最初の2年でビジネスモデルを作りたいと思っていたので、それは順調に進んでいますね。利益の1割は児童養護施設などに寄付させていただいています。
―今年で3年目を迎えますね。
おかげさまで、多くの取引先様とのつながりができました。3年目を迎え、新たな取り組みも始めています。2023年2月には、茨木市でSDGsをテーマにした越前和紙のワークショップを実施しました。ヘリコプターの乗車体験などの「体験型広告」にも力を入れ始めています。
―大変だったことはありますか?
起業後すぐに大学生に混ざって起業のプレゼンテーションをしたときは、まだ中学3年だったので本当に緊張しました。起業当初は敬語の使い方やメールの文面でビジネスマナーが足りないと注意されることもありましたが、その都度教わりながら正しいやり方を身につけていきました。
完全無料の小売店を作りたい
―学生生活と社長業はどのように両立していますか?
平日は学校生活、社長業は土日祝日と分けています。取引先様も理解してくださるのでありがたいです。平日は軽音楽部で部活動もやっていますし、友だちとプリクラを取ったり、ボーリングに行ったりもしています。普通の高校生です。
―やりがいを教えてください。
「想空さんに話を聞いてもらえてよかった」と言ってもらえることや、子どもや保護者が笑顔になってくれることです。それが私にとっての何よりのやりがいです。
―高校3年生ですね。大学進学など、進路についてはいかがですか。
会社を続けていくのは変わらないので、それも含めて、これから、具体的な進路を考えたいと思います。
―社長として、夢を教えてください。
完全無料の小売店を作ることです。
―読者に向けてメッセージをお願いします。
みなさんも、やりたいことがあったら、ぜひ、挑戦してみてください。そして、もし、悩んでいることがあれば、info★sos.jpn.com(★を@に変える)まで何でもメールをください。私でよければ相談に乗らせていただきます。