渡邉優輝さん(秋田・秋田令和高校=3月卒業)の作品「瀬戸際」を紹介します。カマキリを題材に色鉛筆とシャープペンシルで描いたこの作品は、文化部の全国大会「全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)」美術工芸部門に出品されました。渡邉さんに作品に込めた思いやこだわった点を聞きました。(文・写真 野村麻里子)

「次はお前だ」命のかけひき描いた

―カマキリがトンボを捕食していますね。繊細だけど迫力があります。

生き物の命をテーマにしているんです。カマキリを選んだのは、身近な食物連鎖の頂点にいる虫だから。トンボが食べられていますが、自然界だったらこういうシーンは当たり前にみられますよね。でも、人間は文化や技術が発達した社会で生きているので、こういう命の重さを考える機会が少ないと思うんです。

作品「瀬戸際」を描いた渡邉さん

―カマキリが絵を突き破って「カラー」になっていますね。

絵が破れているのは、こちらの世界に来ようとしている感じを出し「次は自分(この絵を見ている人)が狙われているぞ」という緊迫感を出しています。

―生きるか死ぬかの「瀬戸際」……命を意識しない、人間への警鐘になっているんですね。モノクロの部分は機械的に描いていますね。

機械的にしたのは、人間の置かれている社会を表しています。人間にとって乗り物など機械や技術は欠かせません。自然界の生物との違い、自分たち一人では生きれない……そういう部分を表しました。

カマキリ捕まえた思い出頼りに

―制作期間は?

高校2年生の11月から、4カ月程度です。

―シャーペンと色鉛筆を駆使して描いていますね。こだわったポイントは?

左のカマキリはあえて輪郭を描かないようにしています。2Bのシャーペンを使い、ティッシュや指でこすっています。眼に光が入る感じも表現しています。

シャーペンで輪郭描かず描いたカマキリ

配線は、一本一本に全部塗っていなくて、よく見るとあえて塗られていない部分を作っています。そうすることで見やすくなります。破れているところはマンガみたいな感じを出しました。

ち密に描いた配線

―すごくリアルなカマキリですが、何を見て描いたのですか?

特に何も見ていません。子供のころ虫が好きで、カマキリを捕まえた時の記憶を頼りに描きました。