宮ノ下浩子さん(岐阜・斐太(ひだ)高校3年)の彫刻作品「SAVE_DATA_」を紹介します。巨大な真っ白の日記帳に大量のふせんが貼られたこの作品は、全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)の美術・工芸部門に出品されました。どのように制作したのか聞きました。(写真・学校提供)
今までの自分を日記に「セーブ」
― 作品のテーマを教えてください。
「高校生としての自分」をテーマに取り組みました。日記帳に書き込んだ内容が、自分の中に思い出(ふせん)という形で積み重なり、厚く重くなっていくことを表現できたと思います。
高校生という時代は子ども時代の終わり、あるいは大人への準備という人生の大きな転換期と感じています。そのような大きな節目を目の前に、いろいろと考えることがありました。一度これまでを振り返り、セーブしておかなければという衝動に駆られもしました。
この作品には「今までの自分を日記帳に大事にセーブする」という意味とともに、「これから自分が作っていく新たな思い出を、忘れずセーブし積み重ねていきたい」という思いを込めています。
ふせんの色の配置にこだわり
―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか?
本の形に削った発泡スチロールの上に、ティッシュペーパーを貼り込み、支持体として安定させた上で「マットメディウム」という液体を混ぜ込んだ「ジェッソ」という下地を何度も塗り重ねました。
側面のふせんの重なりに注目してもらいたかったので、表紙は真っ白にし、さらに加工は最小限の溝の表現だけに止めました。ふせんは古い日付のものが下になっています。
―難しかった点、苦労した点はありますか?
発泡スチロールの加工では、真っすぐ美しく切ることや、筆跡が残らないよう塗り重ねることに苦労しました。
側面に差すふせんでは、色の偏り具合を考えながら差すのが大変でした。ふせんの日付は実際につけている日記帳から探してきたので、探したりカッターで切り込みを入れてふせんを差したりする作業には時間がかかり、目に見える進捗(しんちょく)がかんばしくないことも精神的に大変でした。
行き詰ったら部員と励まし合い
―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?
美術部はみんな美術室内で作業をしているので、行き詰まったときは仲間の意見を聞いたり、冗談を言い合ったりしながら、励まし合って制作できました。作品の額付けも協力して行うので、一人ではなく美術部みんなで取り組んでいるという安心感が、いつもありました。
繰り返しジェッソを塗る段階では、作業着として着ているジャージの左半身が白くなってしまいました。
―よい作品を作るためのコツを教えてください。
第一に細かい所までこだわり抜くことが大事だと思います。自分が表現したいことに最大級の力、意識で取り組むことも大事です。平面表現、立体表現などジャンルは違っても、人物や物のクロッキーやデッサンをしながら、動きや空間を捉えることを習得しておくべきだと思います。