長﨑心優さん(大阪・港高校3年)は、小学4年からサッカーを始め、転校して入った高校ではたった一人の女子部員としてサッカー部でキャプテンを務めた。ボランチとGKを務める二刀流。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」に選ばれた長﨑さんが、サッカー部での日々を語ってくれた。(文・黒澤真紀、写真・学校提供)

女子サッカー部がない転校先

高校2年の夏、他県から港高校へ転校してきた。前の高校では女子サッカー部に所属。ボランチとGKとして試合経験も豊富だったが、転校当初は新しい環境に慣れるのに精いっぱいで、サッカーをやろうとは思っていなかった。

サッカーが大好きという気持ちを胸に高校生活を送った長﨑心優さん

「前の学校でもサッカーをやっていたなら、一度、練習を見に来ないか」。当時の監督に誘われてサッカー部の練習に参加。男子に混ざってボールを蹴るうちに、サッカーが好きだった気分がよみがえる。開放的な部の雰囲気も心地よく、「ここでならサッカーが続けられるかも」。たった一人の女子部員として入部を決めた。

全国高校サッカー選手権大阪予選ではユニホームを着てベンチに入り、補助員として試合前のウオーミングアップの相手をした。「私はサッカーが大好き。試合に出られなくても、同じ気持ちの人たちとサッカーができるのがうれしかった」

キャプテンとして部員集めに奔走

ところが、高校2年の冬、さまざまな事情が重なり同学年の部員が相次いで退部し、2年生は長﨑さん1人に。1年生と合わせて選手は4人。途方に暮れる長﨑さんだったが、顧問からキャプテンを任される。「驚きました。でも、自分のサッカーが好きな気持ちを大切にしたいと改めて思った」

校庭で華麗なボールさばきを披露

チームの良い方向を模索しながら、「女子がいることに気を遣わせたくない」と、サッカーの話題で後輩たちと積極的にコミュニケーションをとった。

公式戦に出場するには、何としても4月に新入部員を獲得しなければならない。体験にきた1年と一緒に練習し、先輩が優しいこと、練習が楽しいことなど、部の良いところを一生懸命伝えた。その熱意が伝わり、9人の1年生が入部。「もう必死で(笑)。神頼みにも行きました」

元来、負けず嫌いな性格だという。つらいとき、寄り添ってくれたマネジャーや友達、声をかけてくれた先生の存在も大きな支えとなった。

「このチームでサッカーがやれてよかった」

3年生の春、長﨑さんは大阪高校春季サッカー大会(女子の部)に他校との合同チームのメンバーとして出場。初戦で敗退したが、フィールドでサッカーができる喜びをかみしめた。

次の目標に向けて前を見据える

そして高校生活最後の試合、夏の全国高校サッカー選手権大阪予選を迎える。メンバーが体調不良で7人で試合をする過酷な状況だったにもかかわらず、「みんなの真剣なまなざしや必死にプレーする姿を見て、このチームでサッカーがやれてよかったと心から思った」と振り返る。自分が試合に出た春の大会よりも、ベンチから声を出した最後の夏の大会が、長﨑さんにとって一番心に残った試合になった。

サッカー続け体育教員目指す

卒業後は府内の大学に進学し、体育の教員を目指す。進学先には女子サッカー部があり、サッカーを続けるつもりだ。「自分を大切にしてほしいと伝えたい。子どもたちが強く生きられるように支えられる先生になりたい」。挑戦はまだまだ続く。