佐々木ハナさん(北海道・札幌日本大学高校2年)は、小型プロジェクターを使って無地の本に科目内容を映す「デジアナ教科書」を考案した。デジタルとアナログの「いいとこ取り」ができるというデジアナ教科書は、紙の教科書やデジタル教科書と比べてどんなメリットがあるのか? ビジネスに込めた思いとともに聞いた。(文・写真 中田宗孝)

デジタルとアナログの「良いとこどり」

「デジアナ教科書」は小学校での活用を想定。従来の紙製のアナログ教科書と、タブレットなどに表示するデジタル教科書、それぞれの利点を併せ持つ。

佐々木さんはアナログ教科書の学習面の良さを「紙の手触りや匂い、ページをめくる動作、図形の位置といった感覚的、空間的な手がかりは、学習機能と関連付けて記憶に残りやすいんです」と説明。

デジアナ教科書は、紙製の無地の本に科目内容を写すため、アナログ教科書の学習面の利点を残す。また、デジアナ教科書は、デジタル教科書の学習面の良さも生かすという。

「小型プロジェクターで図形や動画を投影できるようにします。その機能によって、例えば理科の勉強では、物理現象がイメージしやすくなったり、化学反応の視覚的な理解が容易になったりします」

「デジアナ教科書」を提案した佐々木ハナさん

ランドセルが軽くなる

国語や算数などの各科目データを搭載したアプリを開発。アプリは無料で提供し、専用の小型プロジェクターを月額レンタル、児童が使う学校・自宅用の2冊の無地の本を個別販売する計画だ。

無地の本にプロジェクターを使って教科書の内容を投影する

これまでランドセルの中身を軽くする具体的な対策が、教科書を教室に“置き勉”するしかなかったが、学校と自宅それぞれに無地の本をそろえることで、軽量の小型プロジェクターのみの持ち運びだけになる。

文部科学省の発表によると、2024年度に小5から中3の「英語」でデジタル教科書の先行導入が始まる。年々ページ数の増えていた紙の教科書がデジタル教科書に切り替われば、持ち運びが楽になり、ランドセルの総重量が軽くなるメリットがある。

大学進学後に本格着手目指す

1月、高校生たちがビジネスのアイデアを競う「第10回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)の最終審査会の場で、「デジアナ教科書」のビジネスモデルを発表。現在は開発技術や費用の面などからデジアナ教科書の試作品は作れていないが、佐々木さんは大学進学後に本格着手を予定している。

「軽量で学習に適したデジアナ教科書は、文部科学省の認可を得やすいサービスだと思っています。起業に限定せず、教科書発行会社の社内ベンチャーといった案も模索しながら、実現化を目指していきたいです」